中部縦貫自動車道【現在の進捗を確認する】

 今回は中部縦貫自動車道について、福井県、岐阜県、長野県と国土交通省のWeb資料及び、Wikipediaの情報をもとに検討します。

<概略>

 中部縦貫自動車道は、長野県松本市から福井県福井市までを結ぶ高規格幹線道路いわゆるB路線で、略称は中部縦貫道です。高速道路ナンバリングによる路線番号は、「E67」が割り振られています。

長野県松本市を起点とし、岐阜県高山市の飛驒清見インターチェンジで東海北陸自動車道に接続、同道を経たのち白鳥インターチェンジで分岐し、福井県福井市に至ります。東海北陸自動車道との重複区間は高速自動車国道、それ以外の区間は国道158号に指定されています。以前は県境区間の国道158号安房峠および油坂第三トンネルまでの郡上市側は冬季になると閉鎖されていましたが、安房峠道路および油坂峠道路の完成により、年間を通して長野県や福井県と岐阜県飛騨地方との相互通行が可能になりました。全線開通した場合は北陸自動車道から当道を経て長野自動車道・中央自動車道へ至る、福井県と関東地方、特に東京都を結ぶ高速自動車交通の最短ルートを形成します。日本列島の中心線に沿って延びているため道路名は「縦貫道」を名乗ります。今回は、未開通区間の現状を中心に確認していきます。

<結論>

・長野県区間は、波田ICから中ノ湯IC間が事業化されておらず、完成の目途は立っていない。

・岐阜県区間は、ほとんどの区間で事業化の見通しが立ってきており、福井県区間は、2026年春の全線開通を予定。

<区間の概略>

起点:長野県松本市(松本JCT(仮称))

終点:福井県福井市(福井北JCT/IC)

延長:約160 km(東海北陸自動車道40.7 kmを除く)

・道路区分

松本JCT(仮称)から波田IC(仮称):第1種第3級

中ノ湯ICから平湯IC:第1種第3級

仮称丹生川ICから飛驒清見IC:第1種第3級

白鳥ICから岐阜県郡上市白鳥町向小駄良 (大藤路橋):第1種第3級

岐阜県郡上市白鳥町向小駄良(大藤路橋)から大野IC:第1種第4級

大野ICから永平寺参道IC、第1種第3級

永平寺参道ICから松岡IC:第3種第3級

松岡ICから福井北JCT/IC:第1種第3級

・設計速度と車線数

松本JCT(仮称)から波田IC(仮称):80 km/h、暫定2車線(完成4車線)

中ノ湯ICから平湯IC:80 km/h、暫定2車線(完成4車線)

丹生川IC(仮称)から飛驒清見IC:80 km/h、暫定2車線(完成4車線)

白鳥ICから油坂出入口:80 km/h、暫定2車線(完成4車線)

油坂出入口から大野IC:60 km/h、完成2車線

大野ICから福井北JCT/IC:80 km/h、暫定2車線(完成4車線)

<路線状況>

松本JCT(仮称)- 中ノ湯IC:未開通

中ノ湯IC – 平湯IC:2車線(暫定2車線)60 km/h 有料

平湯IC – 高山IC:未開通

高山IC – 飛驒清見IC/JCT:2車線(暫定2車線)70 km/h 無料

白鳥IC/JCT – 油坂出入口 :2車線(暫定2車線)70 km/h 無料

油坂出入口 – 勝原IC:未開通

勝原IC – 大野IC:2車線(完成2車線)60 km/h 無料

大野IC – 松岡IC :2車線(暫定2車線)70 km/h 無料

松岡IC – 福井北JCT/IC:2車線(暫定2車線)70 km/h 有料

※中ノ湯IC – 平湯IC間は4車線化優先整備区間。

※越美通洞付近では50 km/hに制限されている。

<未開通区間の見通し>

松本波田道路

2021年に、地元説明会での意見と要望等を踏まえ、1月中旬から本線工事に着手されており、建設が進められています。

起点:長野県松本市島立(仮称松本JCT)

終点:長野県松本市波田石原(仮称波田IC)

全長:5.3 km

規格:第1種第3級

道路幅員:20.5 m

車線数:4車線(暫定2車線で整備)

車線幅員:3.5 m

設計速度:80 km/h

対面通行の間は70 km/hで協議中

波田IC – 中ノ湯IC

長野県松本市波田石原の仮称波田ICと同市安曇中ノ湯の中ノ湯ICを結ぶ区間で基本計画区間です。事業化されておらず、事業名もありません。なお、当区間と並行する国道158号は防災上の問題があるほか、隘路となっていることから、奈川渡ダム付近の約2.2 kmについて国道158号のバイパス道路を建設する道路改良事業「一般国道158号奈川渡改良」が、中部縦貫自動車道とは別に権限代行事業として国土交通省により2011年度に事業化された。また、三本松トンネルから稲核ダムまでの1.5 kmの区間の改良工事である狸平工区が長野県により事業化されています。2022年6月には中部縦貫自動車道の波田から中ノ湯間、整備検討会第2回が開催され、地域の課題と現状整理について意見交換が行われました。

平湯IC – 丹生川IC

岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯の平湯ICと岐阜県高山市丹生川町坊方の仮称丹生川ICとを結ぶ区間は基本計画区間で、未事業化区間です。全長約21 kmの道路で高山東道路として調査が行われていました。飛騨山脈の麓に広がる急峻な地形という地域特有の事情から道路建設に当たって多くの課題が残り、未だ事業化はされていませんでした。こうした状況を打開すべく国土交通省・岐阜県・高山市・飛驒市の担当者で構成される「飛騨北部地域の幹線道路網機能強化検討会」が2019年から2020年にかけ高山市内で2度開催された際に、国道現道が急カーブ、急勾配など多くの問題を抱え、かつ迂回路が無い為に積雪の多い冬季には安全性、定時制の面で大きな支障がある平湯インターチェンジから高山市丹生川町日面までの約13 kmを優先整備区間と定め、併せて高山市丹生川町久手付近に中間のインターチェンジを設置する方向性が確認されました。その後、事業化の前段階となる概略ルートや道路構造に関する検討を含む計画段階評価が進行中です。

高山清見道路

岐阜県高山市丹生川町坊方の仮称丹生川ICと同市清見町夏厩の飛驒清見ICを結ぶ、全長24.7 kmの道路です。通行料金は無料で、当道路のうち高山ICから飛驒清見IC間のみ暫定2車線で供用中です。残りの仮称丹生川ICから高山IC間の9.5 kmは2013年より工事着手しています。

大野油坂道路

福井県大野市東市布の油坂出入口と同市中津川の大野ICを結ぶ道路です。道路規格が第1種第4級、車線幅員が3.25 mで計画されています。日本の高速道路はそのほとんどが車線幅員3.5 mを基準としており、西九州自動車道や三遠南信自動車道で現道を活用する場合に基準未満で供用する例が見られますが、新規に自動車専用道路を整備する場合に最初から車線幅員を3.25 mで計画するのは非常に特異な事例です。全線にわたって事業化されており、大野ICから勝原IC間は2023年3月に開通しました。荒島、九頭竜区間にある荒島第2トンネルの掘削が難航したため勝原ICから九頭竜IC間の開通は2023年秋に延期されました。また、九頭竜・油坂区間は2026年春の開通を予定しています。

<まとめ>

・長野県の波田ICから中ノ湯IC間は、整備計画が作成されておらず、中部縦貫道で最後まで事業化されない区間になるとみられる。

・岐阜県区間のうち、平湯ICから日面までの約13 kmを優先整備区間と定め、事業化に向けた調査が行われています。

・岐阜県区間のうち、日面から丹生川IC間は事業化時期未定ですが、仮称丹生川ICから高山IC間の高山清見道路は事業中です。

・福井県区間は、2026年春の全線開通を予定しています。

―以上―

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