今回は、四国新幹線について、国土交通省と四国新幹線整備促進期成会のWeb資料及びWikipediaの情報をもとに検討します。
<概略>
四国新幹線は、本州・九州と四国をつなぐ新幹線の基本計画路線の総称であり、「四国新幹線」と「四国横断新幹線」の2系統の計画があります。中央新幹線や九州横断新幹線と共に「21世紀の国土のグランドデザイン」における、太平洋新国土軸を構成する西日本の高速鉄道計画でもあります。整備新幹線には含まれていませんが、2011年以降、基礎調査の結果を受けて、整備計画への格上げを求める誘致活動が活発化しています。早ければ、2037年にリニア中央新幹線の新大阪駅延伸が実現し、三大都市圏が一体化した「スーパーメガリージョン」の形成が見込まれます。四国新幹線整備促進期成会では、これに合わせて2037年の四国新幹線開業を目指しています。中央新幹線の開通後は、新大阪での乗り継ぎにより、東京から徳島、高松、松山、高知間の所要時間がいずれも2時間台となる計画です。
国土交通省は、2017年度から、「幹線鉄道ネットワーク等のあり方に関する調査」において、主要都市間の輸送密度や時間距離の基礎的なデータ収集、単線による新幹線整備を含む効率的な新幹線整備手法の研究、在来線の高速化手法、既存の幹線鉄道との接続手法などについて調査を行っています。
四国新幹線の営業主体となる四国旅客鉄道は、2030年までの中長期経営計画「長期経営ビジョン2030」と「中期経営計画2025」に新幹線の導入を盛り込んでいますが、事業化の目途は立っていません。今回は、四国新幹線整備促進期成会のWeb資料を中心に検討していきます。
<結論>
・四国を縦断及び横断する新幹線が計画されているが、海峡部整備の困難さから、瀬戸大橋を除く海峡以外の整備を構想中。
・採算面では単線整備が有力とされるが、並行在来線の処遇も課題で、事業化へのハードルは高い。
<基本計画ルート>
四国新幹線は下記の2路線が計画されています。
(1):四国(縦断)新幹線と呼ばれる路線で下記の内容で計画されています。
ルート:大阪市⇔徳島市⇔高松市⇔松山市⇔大分市
基本計画決定:1973年
特徴:紀淡海峡をトンネルか橋又は明石海峡をトンネルで抜ける。
大鳴門橋には新幹線を通すスペースあり。
ただし、鉄道荷重は単線載荷を想定しており、橋上のすれ違い不可。
(1編成分の重みしか耐えられない。)
豊予海峡をトンネルか橋で通過する。
(2):四国横断新幹線と呼ばれる路線で下記の内容で計画されています。
ルート:岡山市⇔高知市
基本計画決定:1973年
特徴:瀬戸内海を瀬戸大橋で抜ける。瀬戸大橋に新幹線を通すスペースあり。
ただし、設計速度は在来線が120km/h、新幹線が160km/hで、新幹線の減速必要。
児島駅と宇多津駅には新幹線駅を建設するスペースあり。
<基礎調査の概要>
四国新幹線整備促進期成会のWebページに公開されている2014年の調査結果。
下記の3ルートが検討されています。
(ケース①:上記(1)と同じ)
ルート:大阪市⇔徳島市⇔高松市⇔松山市⇔大分市
整備総延長:477km
事業費:4.02兆円
新大阪までの所要時間:徳島駅40分(▲133分)高松駅61分(▲ 43分)
松山駅98分(▲112分)高知駅199分(変化なし)
B/C:0.31
特徴:海峡部分は海底トンネルを想定
(ケース②:上記(2)と同じ)
ルート:岡山市⇔高知市
整備総延長:143km
事業費:0.73兆円
新大阪までの所要時間:徳島駅148分(▲ 25分)高松駅88分(▲ 16分)
松山駅193分(▲ 17分)高知駅92分(▲103分)
B/C:0.59
特徴:山陽新幹線への乗り入れを想定
(ケース③:ルート1と2を足し合わせ、海峡部を除いたもの)
ルート:岡山市⇔高知市、徳島市⇔高松市⇔松山市
整備総延長:302km
事業費:1.57兆円
新大阪までの所要時間:徳島駅95分(▲ 78分)高松駅75分(▲ 29分)
松山駅98分(▲112分)高知駅91分(▲104分)
B/C:1.03
特徴:山陽新幹線への乗り入れを想定
将来的な海峡部分の整備により、山陽新幹線の代替経路を確保
<単線案の検討>
国土交通省による2019年度の調査では、前年度の調査結果を踏まえて、下記の事項について調査が行われました。
1,ケーススタディの実施、単線新幹線の有効性や課題の検討:具体的な条件を設定し、路線全体のコスト削減率の検討が行われた。
2,新幹線整備後の在来線の将来像に係る検討の深度化:新幹線整備が在来線の利用に与える影響が在来線のタイプ別に分析された。
3,新幹線の整備効果に関する検討:各新幹線駅の特性と利用状況の関係の整理が行われた。
単線による新幹線整備のケーススタディでは、駅間距離が最短10kmから最長50kmに、トンネル区間の割合が3割から7割に設定され、コスト縮減効果と運行上の課題の整理が行われました。路線全体で最大15%程度のコスト削減効果がある一方で、表定速度は最大20%程度低下することが分かりました。今後の調査では、ケーススタディの結果を踏まえ、より合理的な整備・運行手法についての検討が行われるとしています。
一般社団法人日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)の提言によると、
計画概要:単線方式(一部複線)を活用した新幹線の整備(約302km)
概算事業費:約1兆円(単線運用区間の導入により建設費の削減)
B/C:1.03(四国の鉄道高速化連絡会試算)→1.56へ向上
事業方式:整備新幹線方式を利用したPFI方式など
とされていますが、事業化にはさらに詳細な検討が必要とみられます。
<その他の検討事項>
2022年6月付で公表された四国アライアンス地域経済研究会の報告書によれば、四国4県都における新幹線駅、新幹線と二次交通や新幹線整備と未来の四国について検討が行われているが、結論は得られていない。詳細検討によって単線整備か複線整備かを決定すると共に、大まかな駅位置の決定。並行在来線の処遇などを解決しない限り、事業化へ進むことはできず、越えなければならないハードルはかなり高いとみられます。
<まとめ>
・四国新幹線は、四国を縦断する新幹線と横断する新幹線の二つが計画されているが、海峡部分の整備の困難さから、瀬戸大橋を除く海峡部を整備しない方向で計画が練られている。
・海峡部を除いて全線複線で整備した場合、費用便益比は採算ラインにのるが、財源等の問題から、事業化には至っていない。
・単線で整備すれば、費用便益比は上がるが、所要時間が20%悪化すると試算されている。
・今後、詳細検討に加え並行在来線の処遇も決定しなければならず、事業化へ向けたハードルは高い。
-以上-
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