東京外かく環状道路【関越~東名間の進捗(2022年12月)】

今回は、東京外かく環状道路の関越~東名間の工事進捗について、NEXCO東日本、NEXCO中日本、国土交通省のホームページ資料及びWikipediaの情報を基に検討します。

<概略>

東京外かく環状道路は、都心から約15kmの圏域を環状に連絡する延長約85kmの道路であり、首都圏の渋滞緩和、環境改善や円滑な交通ネットワークを実現する上で重要な道路です。関越道と連絡する大泉JCTから高谷JCT間の約49kmが開通済であり、現在、関越道から東名高速間の約16kmが事業中です。関越道から東名高速間は、国土交通省、東日本高速道路(株)、中日本高速道路(株) が共同して事業を進めています。東名高速から湾岸道路までの約20kmについては予定路線に位置づけられています。

東京外かく環状道路の関越から東名間は、住宅などが密集する練馬区、杉並区、武蔵野市、三鷹市、調布市、狛江市、世田谷区の市街地を通過する道路であることから、地上への影響を軽減することを目的として、大深度地下方式にて事業を進めています。そのため、極力地下40m以深に建設するトンネル構造いわゆるシールドトンネルを基本としており、本線トンネルとランプトンネルの接合部は地中における非開削構造として計画しています。

アクセスルートは、関越道との接続部に大泉JCT、中央道との接続部に中央JCTが設けられるほか、東名高速との接続部に東名JCTが設置されます。また、目白通り、青梅街道、東八道路との接続部に、ICが設けられます。

<結論>

・本線トンネル大泉南工事は、2022年にシールドトンネルの掘進を再開したが、本線トンネル東名北工事は、再開の目途は立っていない。

・本線トンネル東名北工事には、東京地裁の判決対応と、陥没事故対策を完了する必要があり、再開へのハードルは高い。

<計画概要>

区間:起点 東京都練馬区大泉町 終点 東京都世田谷区宇奈根

計画延長:16.2km

幅員:40.0~98.0m

道路規格:第2種第1級

設計速度:80km/h

車線数:6車線

事業化:2009年度

事業費:1兆5,975億円(2016年時点)

計画交通量:76,200~96,200(台/日)

IC:目白通りインターチェンジ、青梅街道インターチェンジ、東八道路インターチェンジ

JCT:大泉ジャンクション、中央ジャンクション、東名ジャンクション

<本線工事概略>

本線トンネル(南行)大泉南工事

本線トンネル(南行)大泉南工事は、大泉立坑をスタートし、井の頭通りまで約7.0kmの南行トンネルを構築する工事です。浅いところは地下4m、深いところは地下50mで様々な地盤を掘削します。最新のシールド技術のほとんどの要素を取り入れて集中管理を行い、大半を自動化します。また、シールドで掘削した大量の土砂(1m掘り進むと学校のプール1杯分)を、供用中の外環道内に設置するベルトコンベヤを使って、和光市の仮置き場まで搬送します。その延長は約6kmにもおよびます。

発注者:東日本高速道路株式会社 関東支社

請負者:清水・熊谷・東急・竹中土木・鴻池JV

工事場所:東京都練馬区大泉町~東京都武蔵野市吉祥寺南町

トンネル仕様:外径Φ15.8m、内径Φ14.5m、覆工厚650mm

工事内容:シールドトンネル本体工6,986m、地中接合工1箇所

本線トンネル(北行)大泉南工事

本線トンネル(北行)大泉南工事は、大泉立坑をスタートし、井の頭通りまで約7.0kmの北行トンネルを構築する工事です。直径1.2mの杭を合計で46本切りながらトンネルを掘り進める、既設杭のシールド機直接切削が特徴となります。また、複雑な地盤を掘削する上での大深度高水圧対策として、この現場のために開発を重ねた特殊な起泡剤を使用して、土質によって種類を変更することなく塑性流動性を確保し、複雑かつ急変する土層に迅速に対応するなど、トンネル工事に関わる様々な技術を集約しています。

発注者:中日本高速道路株式会社 東京支社

請負者:大成・安藤・間・五洋・飛島・大豊JV

工事場所:東京都練馬区大泉町~東京都武蔵野市吉祥寺南町

トンネル仕様:外径Φ15.8m、内径Φ14.5m、覆工厚650mm

工事内容:シールドトンネル本体工6,976m、地中接合工1箇所

本線トンネル(南行)東名北工事

本線トンネル(南行)東名北工事は、東名立坑をスタートし、井の頭通りまで約9.2kmの南行トンネルを構築する工事です。国内最大級の口径かつ長距離のシールド工事で、同時掘進を採用し、高速施工を可能としています。高低差がある大深度立坑で掘削土の大量搬送を可能とするスネークベルコンや、掘進の後工程である床版工も掘進と併設施工できる計画、設備を採用しています。

発注者:東日本高速道路株式会社 関東支社

請負者:鹿島・前田・三井住友・鉄建・西武JV

工事場所:東京都世田谷区大蔵~東京都武蔵野市吉祥寺南町

トンネル仕様:外径Φ15.8m、内径Φ14.5m、覆工厚650mm

工事内容:シールドトンネル本体工9,155m

本線トンネル(北行)東名北工事

本線トンネル(北行)東名北工事は、東名立坑をスタートし、井の頭通りまで約9.1kmの北行トンネルを構築する工事です。国内最長のシールドトンネル掘進工事と併行して、坑内では床版設置やインバート構築等の内部構築工事を行います。円滑な工事運営のために、荷積みトラックや交通状況を地図上等で把握する総合的物流管理システムを構築しております。いわゆる道路管制センターや列車運行管理センターの一室に観られるように様々な管理データをモニターに表示して、一括運行管理するICTを多用し、建設工事のイメージを一新するものです。

発注者:中日本高速道路株式会社 東京支社

請負者:大林・西松・戸田・佐藤・錢高JV

工事場所:東京都世田谷区大蔵~東京都武蔵野市吉祥寺南町

トンネル仕様:外径Φ15.8m、内径Φ14.5m、覆工厚650mm

工事内容:シールドトンネル本体工9,099m

<工事の進捗>

用地取得率(2022年1月)

東名JCT:99%、中央JCT:99%、青梅街道IC:33%、大泉JCT:99%

本線トンネル(南行)大泉南工事

2020年10月に調布市内で発生した陥没事故を受け、シールドマシンの掘進を停止していましたが、2022年2月に事業用地内での掘進を再開。しかし4月に施工トラブルのためいったん停止し、2022年11月1日から改めてシールドマシンの掘進を再開しています。

シールドマシンの位置:東京都練馬区三原台3丁目

本線トンネル(北行)大泉南工事

2020年10月に調布市内で発生した陥没事故を受け、シールドマシンの掘進を停止していました。その後、2021年7月から11月まで、シールド機と周辺の改良地盤の固着を防ぐために135mだけ掘進した後、掘進を停止していましたが、2022年12月8日よりシールドマシンによる掘進を再開しました。

シールドマシンの位置:東京都練馬区石神井町8丁目

本線トンネル(南行)東名北工事

2020年10月に調布市内で発生した陥没事故を受け、シールドマシンの掘進を停止しています。2022年2月、東京地方裁判所から工事差止仮処分命令が出され、気泡シールド工法による掘削工事による工事再開ができない状況となっています。また、陥没事故に対応した地盤補修工事も終わっておらず、工事再開のめどは立っていません。

シールドマシンの位置:東京都調布市東つつじケ丘2丁目

本線トンネル(北行)東名北工事

2020年10月に調布市内で発生した陥没事故を受け、シールドマシンの掘進を停止しています。2022年2月、東京地方裁判所から工事差止仮処分命令が出され、気泡シールド工法による掘削工事による工事再開ができない状況となっています。また、陥没事故に対応した地盤補修工事も終わっておらず、工事再開のめどは立っていません。

シールドマシンの位置:東京都調布市東つつじケ丘3丁目

大泉JCT Fランプシールド工事

掘進作業完了。

中央JCT 北側 Aランプシールド工事

掘進作業中。

中央JCT 北側 Hランプシールド工事

掘進作業完了。

中央JCT 南側 B・Fランプシールド工事

 掘進再開の予定は現在発表されていない。

 陥没個所の地層と類似しており、工事再開には時間を要する可能性が高いと考えられる。

東名JCT北側 A・Hランプシールド工事

2022年12月に「今後の掘進」などに関するオープンハウスを開催し、掘進開始を目指している。

<まとめ>

・本線トンネル大泉南工事は、南行、北行ともにシールドトンネルの掘進を再開しています。

・本線トンネル東名北工事は、南行、北行ともに、東京地裁で工事差し止め判決が出ている影響と、陥没事故の対策工事が始まっていないため、シールドトンネルの掘進再開の目途は立っていない。

・工事を見合わせていた各ランプシールドトンネルも工事を進める動きがあるが、中央JCT南側のランプシールドトンネルに関しては、工事再開の情報は無い。

・青梅街道IC部における用地取得、区分地上権取得は進んでいない。

-以上-

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