今回は北陸新幹線「敦賀 – 新大阪間」について、環境影響評価方法書と国土交通省のWeb資料及びWikipediaの情報をもとに検討します。
<概略>
北陸新幹線は、1973年に全国新幹線鉄道整備法に基づき、「高崎市付近・長野市付近・小浜市付近を経由し東京と大阪を結ぶ路線」として整備計画が決定されました。このうち、東京駅から金沢駅が2015年までに順次開業し、金沢駅から敦賀駅は2023年春の開業を目指し建設中です。敦賀駅以西のルートについては様々な議論がなされましたが、2016年12月、政府与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチームは敦賀駅から西進して福井県小浜市を経由、そこから南下して京都駅につなぐ「小浜・京都ルート」を正式採用しました。京都駅 – 新大阪駅間のルートについては、引き続き与党PTで検討されていましたが、2017年3月に、JR片町線松井山手駅付近に中間駅を設ける「南回り案」を正式採用しました。
鉄道建設・運輸施設整備支援機構は2017年度から駅やルートを決めるための調査を始め、2019年5月に計画段階環境配慮書の中で概略ルートを示しました。設置予定駅は敦賀駅、小浜市(東小浜)附近、京都駅、京田辺市(松井山手)附近、新大阪駅で、主要な線形条件として、最小曲線半径は4,000m、最急勾配は15‰とし、ラムサール条約に基づく登録湿地である三方五湖や周辺の若狭湾国定公園、京都丹波高原国定公園のうち第1種・第2種特別地域に指定されている芦生の森を回避することなどが考慮されています。今後の詳細なルート検討においては、京都市中心市街地、伏見酒造エリアを回避した区域を選定し、京都市市街地の文化財や地下水への影響を考慮すること、京都丹波高原国定公園や金剛生駒紀泉国定公園の第3種特別地域等を通過する際の自然環境に配慮した工法の検討、全体の8割がトンネルを占めるため、都市部における大深度地下の利用や発生掘削土の受け入れなどの考慮事項が挙げられています。
<結論>
・京都府内の環境影響評価が遅れており、目標の2023年春の着工は難しい情勢となっている。
・最悪の場合、ルート選定が振り出しに戻る可能性もある。
<路線概要>
検討ルート:南回り(京田辺ルート)松井山手駅附近経由
駅の設定:敦賀、小浜市附近(東小浜)、京都、京田辺市附近(松井山手)、新大阪
建設延長:約143km
概算建設費: 約21,000億円(2016年4月価格)
想定工期:15年
所要時間:敦賀・新大阪間約44分、福井・新大阪間約55分、金沢・新大阪間約1時間20分
運賃・料金:敦賀・新大阪間5,700円、福井・新大阪間6,460円、金沢・新大阪間8,740円
輸送密度:(開業初年度)約40,400人キロ/日・km(敦賀・新大阪間)
費用便益比:B/C 1.1(1.05)、総便益(B) 約8,500億円、総費用(C) 約8,100億円
<環境影響評価方法書から見る路線概要>
・福井県内
敦賀駅から敦賀市内を主に高架橋で通過し、美浜町、若狭町は主に山岳トンネルで通過します。小浜市内は、主として高架橋で通過し、駅について、小浜線東小浜駅付近に設置します。地上駅が想定されており、相対ホーム2面2線とする計画です。小浜市附近以南は、主に山岳トンネルで通過し、京都府境へ向かいます。
・京都府内
福井県境から京都駅へ至るルートは、京都丹波高原国定公園第1種特別地域及び第2種特別地域、琵琶湖国定公園第2種特別地域を回避したルートとし、主としてトンネルで通過します。京都駅付近は、京都市中心市街地は回避し、可能な限り道路等公共用地の下の活用を考慮し、必要に応じて「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」の活用も検討を行います。 京都駅は地下駅が想定されており、相対ホーム2面2線とする計画です。京都駅から大阪府境へ至るルートは、伏見酒造エリアを回避した区域を選定し、なるべく直線と なるように考慮しつつ、松井山手附近を経て、大阪府境に至るルートです。高架橋又はトンネル(都市部)構造で通過する計画です。松井山手駅は、地上又は地下が想定されており、相対ホーム2面2線とする計画です。
・大阪府内
大阪府内は、トンネル構造とし、大阪市及びその周辺の都市トンネルは、可能な限り道路等公共用地の下の活用を考慮し、必要に応じて「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」の活用も検討を行います。主要な河川である淀川は、トンネルで、できる限り短い距離で通過します。終着駅の新大阪駅は地下駅が想定されており、島式ホーム2面4線とする計画です。
<今後の見通し>
北國新聞が2022年11月27日に配信した記事によると、着工の前提となる環境影響評価は京都で1年8カ月ほど遅れているとみられ、与党は2020年12月に決議した2023年春着工のみならず、2024年春の敦賀開業と同時に着工できるかも不透明な情勢とみられています。
また、京都市内の地下水への影響や、建設費の高騰も課題として挙がっており、最悪の場合ルート選定が振り出しに戻る可能性もあると考えられています。
<まとめ>
・大部分の区間がトンネルで計画されている。
・新設される駅は、終着駅の新大阪駅を除き全て相対ホーム2面2線で計画されており、区間内で追い越しは出来ないとみられる。
・京都府内の環境影響評価が遅れており、与党が2020年12月に決議した2023年春着工は難しい情勢となっている。
・最悪の場合、ルート選定が振り出しに戻る可能性もあるとみられる。
-以上-
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