新幹線「新宿-大宮線」建設【議論が沈静化したのはなぜ?】

 今回は新幹線「新宿-大宮線」の建設について、過去の報道資料とWikipediaの情報をもとに検討します。

<概略>

 2005年時点で、大宮から東京までの新幹線ルートは、東北、上越、長野の3線の新幹線が共用していたため、休日の時間帯によっては1時間当たり片道15本程度の列車が発車しており輸送力が限界に近いと考えられていました。よって将来、北陸と北海道の各新幹線が開業した場合、現状の設備のままでは東京駅に乗り入れない大宮止まりの列車設定が必要と言われていました。ゆえに、都心の新幹線発着枠の増強のため「新宿-大宮間」に新線を建設する案が浮上していました。

 2005年1月8日 日本経済新聞夕刊1面記事によると、想定ルートは大宮駅で東京駅へ向かう既存の新幹線ルートと分岐し、JR埼京線や山手線の地下を通って新設する新宿駅の地下ホームへ乗り入れるルートが考えられています。このルートで建設すれば、最高時速260km/hで新宿から大宮までおよそ11分で到着できると想定されています。

 この新幹線ルートは上越新幹線構想時に起点とされた新宿駅と大宮駅を結ぶルートであり、上越新幹線の延伸と考えられることもあります。国鉄の上越新幹線構想段階の資料には、大宮から東北本線と並行して赤羽まで進み、赤羽駅で東北新幹線と交差し、池袋方面へ向かい、新宿駅へ至るルートが示されています。

<結論>

・現状設備で増発等の今後の新幹線運用に支障が無いため現在検討は行われていない。

・新幹線の利便性向上の観点からは必要性が高いため、今後詳細検討が望まれる。

<路線概要>

 東京から北へ向かう新幹線は、大宮まですべて同じ路線を走り、大宮駅から東北・山形新幹線、北海道・秋田新幹線方面と、上越・北陸新幹線方面の2方向に路線が分かれます。上記の新幹線全てが東京-大宮間を走っており、東京-大宮間の新幹線路線は混雑しています。よって新たに、新宿-大宮間に新幹線を建設し、東京-大宮間の新幹線の混雑を解消しようとするものです。

 想定される最高時速260km/hで新宿から大宮までおよそ11分で、東京‐大宮間の最高時速130km/h、所要時間24分と比べて、およそ半分以下の所要時間となる見込みです。想定ルートは大宮駅で東京駅へ向かう既存の新幹線ルートと分岐し、JR埼京線や山手線の地下を通って新設する新宿駅の地下ホームへ乗り入れるルートが考えられていますが、上越新幹線構想時点では、大宮駅から赤羽駅までは東北本線と並行し、赤羽駅から池袋を通って新宿駅へ向かうルートが構想されていました。建設費は2005年時点で約6000億円、2010年時点で約1兆円と報道されていました。

<必要性>

 現在、最大1時間に18本の列車が大宮駅から東京駅方面に発車しており、これは東海道新幹線の東京駅を超える発車本数です。このことから、東京-大宮間の新幹線路線は混雑していると言えます。また、数年後に予定されている北海道新幹線の札幌延伸時には更に発車本数が増加することが見込まれており、新宿-大宮線建設の必要性は高まっていると考えられます。ただ、東京駅に乗り入れず、大宮駅を発着駅とする列車の本数を増やすことで、首都圏からの新幹線発着本数を増やすことは可能であり、今後の増発にも既存設備で対応できることから、営業主体のJR東日本も本構想に積極的ではありません。ただ、大宮発着の列車は、大宮駅での乗り換えが発生してしまうため、都心方面へ向かう乗客にとっては、不便になります。新宿-大宮間の新幹線が実現すれば、新宿駅から新幹線へのアクセス利便性が高まるとともに、東京-大宮間の障害発生時の代替路線として機能することも期待されます。

<事業性>

 おおよその試算で投資回収は約44年と試算できます。計算根拠は以下の通りです。

建設費:約1兆円(JR東日本試算)

儲け:約227億円/年

※儲けの計算

・JR東日本の東京駅新幹線乗客数の半分が、新宿大宮線を利用すると仮定すると、75,004人/日(2019年、日当たり乗車数)×2(乗降客数を出すため2倍する)×365日÷2=約27.3百万人/年

・東京→大宮までの新幹線自由席料金の半分を儲けとすると、1,660円÷2=830円

・よって儲けは、約27.3百万人/年×830円=約227億円/年

上記の様な粗い計算ですが、投資回収年は一企業が投資するには長すぎるようですが、効果に算入すべき項目は他にもあり、詳細な検討が望まれる。

<品川方面への延伸>

 新幹線「新宿-大宮線」が建設されれば、新宿から先の品川まで延伸する、新幹線「新宿―品川線」や、品川から羽田空港まで延伸する、新幹線「羽田空港線」等も検討することが可能になります。新幹線「新宿-大宮線」の建設費から推計すると、新幹線「新宿―品川線」は3,000~4,000億円、新幹線「羽田空港線」は2,000~3,000億円(単線)と考えられます。効果としては、品川駅でリニアとJR東日本管内の新幹線が直結する。羽田空港から新幹線へのアクセスが便利になることなどが挙げられます。

<まとめ>

・新幹線の利便性向上を考慮すれば、新幹線「新宿-大宮線」の必要性は高いと考えられるが、現状の設備でも列車増発などの今後の新幹線運用に支障が無いため積極的に検討は行われていない。

・現在公表されているデータから概算すれば、新幹線「新宿-大宮線」の建設は、事業性は低いが、今後整備効果を詳細に見積もり、更に詳細検討していくことが望まれる。

・新幹線「新宿-大宮線」が建設されれば新宿から品川、品川から羽田空港への延伸も検討の俎上に上る。

-以上-

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