今回は、新東名・新名神6車線化の現状と今後の見通しについて、NEXCO中日本及びNEXCO西日本と国土交通省のホームページ資料及びWikipediaの情報を基に検討します。
<概略>
新東名高速道路は、神奈川県海老名市の海老名南ジャンクションから静岡県を経由して愛知県豊田市の豊田東ジャンクションに至る高速道路です。2022年4月時点での開通区間は、計画延長の約9割にあたり、海老名南ジャンクションから新秦野インターチェンジ間、新御殿場インターチェンジから豊田東ジャンクション間となっています。残る新秦野インターチェンジから新御殿場インターチェンジ間の開通時期は未定となっています。開通区間のうち、御殿場ジャンクションから浜松いなさジャンクション間は6車線化され、最高速度120 km/hで運用されています。
新名神高速道路は、三重県四日市市の四日市ジャンクションから滋賀県、京都府、大阪府を経由し兵庫県神戸市北区の神戸ジャンクションに至る高速道路です。2022年11月時点での開通区間は、四日市ジャンクションから大津ジャンクション間、城陽ジャンクションから八幡京田辺ジャンクション間、高槻ジャンクションから神戸ジャンクション間となっています。残る大津ジャンクションから城陽ジャンクション間は2024年度、八幡京田辺ジャンクションから高槻ジャンクション間は2027年度開通予定となっています。亀山西ジャンクションから甲賀土山インターチェンジ間で進めている6車線化事業のうち、亀山西ジャンクションから甲賀土山インターチェンジ間の上り線の一部区間約4.1kmが、2022年7月から6車線の供用を開始しました。
新東名高速道路と新名神高速道路の間は伊勢湾岸自動車道で結節されています。愛知県豊田市の豊田東ジャンクションから三重県四日市市の四日市ジャンクションに至る区間のうち、全線で6車線以上の車線数が供用されていますが、最高速度100 km/hの運用となっています。
<結論>
・新名神高速道路の亀山西インターチェンジから高槻ジャンクション間の6車線化に大きな障害は無いとみられる。
・その他の4車線区間の6車線化は、事業化の目途が立っていない。
・トンネルが片側2車線分の断面しかない区間の6車線化も、単一断面が望ましい。
<6車線化の効果>
・新たな物流システム支援
三大都市圏をつなぐ東名・新東名・名神・新名神は、高規格幹線道路全体の貨物輸送の半数を担っています。また、物流業界はドライバー不足が進んでおり、トラック輸送の効率化を図ることが急務となっています。新東名の6車線整備により「ダブル連結トラック」や「トラック隊列走行」などに向けたインフラ環境整備に寄与することができ、物流の効率化による生産性向上が期待できます。
・交通集中による渋滞の緩和
新東名の開通以降、下り線の新清水ジャンクションから長泉沼津インターチェンジ間で、交通混雑期を中心に渋滞が発生しています。先行して片側3車線化した下り線の新清水ジャンクションから長泉沼津インターチェンジ間で2020年7月末から9月に渋滞は発生しませんでした。
・事故率低減による安全性向上
視界が広く、快適に走行できる片側3車線区間は、片側2車線区間よりも、急加速や急減速を伴う追い越し行動(左右ハンドル操作)が35%少ないことが確認されています。片側3車線区間は片側2車線区間よりも死傷事故率が3割減少することにより、安全性の向上が期待されます。
<6車線化の現状>
・新東名高速道路
海老名南ジャンクションから新秦野インターチェンジ間
暫定4車線で開通済(6車線化調査中)
最高速度100 km/h(厚木南IC以東の上り線は最高速度70 km/h)
新秦野インターチェンジから新御殿場インターチェンジ間
暫定4車線で事業中(開通時期未定)(6車線化調査中)
新御殿場インターチェンジから御殿場ジャンクション間
暫定4車線で開通済(6車線化調査中)
最高速度100 km/h
御殿場ジャンクションから浜松いなさジャンクション間
6車線で開通済
最高速度120 km/h
浜松いなさジャンクションから岡崎サービスエリア間
暫定4車線で開通済(6車線化調査中)
最高速度100 km/h
岡崎サービスエリアから豊田東ジャンクション間
6車線で開通済
最高速度100 km/h
・伊勢湾岸自動車道
豊田東ジャンクションから四日市ジャンクション間
6車線で開通済(合流等の影響で一部8車線区間あり)
最高速度100 km/h(新東名・新名神と比較して幅員が狭い)
・新名神高速道路
四日市ジャンクションから亀山西ジャンクション間
暫定4車線で開通済(6車線化調査中)
最高速度100 km/h
亀山西ジャンクションから甲賀土山インターチェンジ間
暫定5車線で開通済、土山サービスエリア付近の4.1kmは6車線(6車線化事業中)
最高速度100 km/h
甲賀土山インターチェンジから大津ジャンクション間
暫定4車線で開通済(6車線化事業中)
最高速度100 km/h
大津ジャンクションから城陽ジャンクション間
暫定4車線で事業中(2024年度開通予定)(6車線化事業許可)
最高速度100 km/h
城陽ジャンクションから八幡京田辺ジャンクション間
暫定4車線で開通済(6車線化調査中)
最高速度100 km/h
八幡京田辺ジャンクションから高槻ジャンクション間
暫定4車線で事業中(2027年度開通予定)(6車線化事業許可)
最高速度100 km/h
高槻ジャンクションから神戸ジャンクション間
暫定4車線で開通済(6車線化調査中)
最高速度100 km/h
このうち、高槻ジャンクションから神戸ジャンクション間は、交通量を見ると、6車線化の必要性は低いと考えられます。
<6車線化の方法>
1つは盛土や橋梁を両側に1車線分ずつ拡大する方法で、これを単一断面と称します。拡幅においては橋梁の場合、両側に床板を付け足すことになります。トンネル区間は、防護工を設置したうえで、既設の覆工等の撤去及び掘削を行い新たに覆工等の施工を行いますが、長期間の交通規制が必要になると共に、工事費もかさみます。そのためこの方法は、トンネルが片側3車線で施工されていた、御殿場ジャンクションから浜松いなさジャンクション間と、亀山西ジャンクションから大津ジャンクション間で用いられています。また、未開通区間で6車線化の事業許可が出た、大津ジャンクションから高槻ジャンクション間も、この方法が用いられるとみられます。その他の区間も、明かり区間が連続する区間はこの工法が有力とみられます。
もう1つは分離断面と称され、これは既存の往復4車線道路を片側3車線化したうえ、その隣に3車線の別線を建設する方法です。主としてトンネルが連続する山岳区間では分離断面が採用されるとみられ、伊勢原大山インターチェンジから新御殿場インターチェンジ間、浜松いなさジャンクションから岡崎サービスエリア間、菰野インターチェンジから亀山西ジャンクション間、高槻ジャンクションから神戸ジャンクション間のトンネル区間は、トンネル断面が片側2車線分のため、この分離断面が採用されるとみられます。
分離断面は、既存の2本のトンネルの他に片側3車線の大断面トンネルをもう1本掘削することになりますが、6車線化の効果のうち「新たな物流システム支援」や「事故率低減による安全性向上」が旧線流用部では見込めません。費用や技術面での課題はありますが、整備効果を最大化するためには、単一断面での6車線化が望ましいと考えられます。
<まとめ>
・新東名高速道路は、御殿場ジャンクションから浜松いなさジャンクション間と岡崎サービスエリアから豊田東ジャンクション間が6車線で開通済みですが、その他の区間は6車線化事業化の目途は立っていません。
・新名神高速道路の亀山西インターチェンジから高槻ジャンクション間の6車線化に大きな障害は無いとみられますが、その他の区間の6車線化事業化の目途は立っていません。
・トンネル断面が片側2車線分で施工されている区間は、分離断面での施工が有力ですが、効果を最大化するためには単一断面での施工が望ましい。
・高槻ジャンクションから神戸ジャンクション間は、6車線化の必要性は低いと考えられます。
-以上-
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