今回は2023年3月27日七隈線延伸区間が開業予定の福岡市地下鉄の延伸事業について、福岡市地下鉄HP資料と関係自治体のHP資料及びWikipediaの情報を基に検討します。
<概略>
福岡市の地下鉄事業の正式名称は福岡市高速鉄道といい、JRの座席予約システム「マルス」でもこの正式名称で登録されています。開業後、旅客案内上は「福岡市営地下鉄」と呼称した時期もありましたが、現在では「福岡市地下鉄」の呼称が使用されています。空港線、箱崎線と七隈線の3路線で構成されており、空港線と箱崎線は狭軌、七隈線は標準軌の鉄輪式リニアです。電化方式は全路線で直流1500V、全線が福岡市内に所在しますが南区には路線が通っていません。
空港線ではJR九州筑肥線との相互直通運転が行われています。福岡市交通局の車両は筑肥線の姪浜駅 – 筑前前原駅間に乗り入れます。過去には一部が同線の筑前深江駅まで乗り入れていましたが、2021年9月現在、福岡市交通局の車両で筑前深江駅まで乗り入れる列車はありません。JR九州の車両は唐津線西唐津駅から筑肥線を経て空港線全線に乗り入れます。福岡市交通局・JR九州の車両ともに、地下鉄線内はすべて自動列車運転装置によるワンマン運転を行い、筑肥線の姪浜駅 – 筑前前原駅間ではワンマン運転、筑前前原駅 – 唐津駅・西唐津駅間ではJRの車掌が乗務しツーマン運転を行っています。箱崎線および七隈線では他社との相互直通運転はありません。幾度か箱崎線と接続する西鉄貝塚線との相互直通運転が検討されましたが、費用対効果の面から凍結されています。
2023年3月27日に七隈線の博多駅延伸路線の開業が計画されています。今回は、福岡市地下鉄の延伸事業について検討します。
<結論>
・七隈線延伸事業(天神南 – 博多間)は、2023年3月27日開業予定。
・福岡空港駅から長者原駅方面の延伸調査が実施されたが、事業化の目途は立っていない。
<七隈線延伸事業>
・延伸までの経緯
博多駅方面への延伸や、天神南駅から中洲川端駅を経て築港方面を結ぶ計画があり、博多駅方面へは薬院駅(渡辺通一丁目交差点付近)から分岐して結ぶ計画でしたが、博多駅方面への延伸は利用客からも要望が多く、天神南駅から集客力の高いキャナルシティ博多付近を経由して博多駅を結ぶ構想も浮上しました。このうち3番目の計画が採用され、天神南駅から博多駅までの区間の鉄道事業許可を取得、工事着手されています。当初は2020年度に開通する予定となっていましたが、2016年11月8日に本工事に伴う博多駅前2丁目交差点付近での大規模な道路陥没事故が発生し工事が一時期中断され、2022年度に延期されています。
・事業概要
延伸区間:天神南 – 博多
建設キロ:約1.4km(営業キロ 約1.6km)
建設費:約587億円
路線構造:全線地下式
乗車人員:約8.2万人(うち、新規利用者数は約2.3万人)
開業予定:2023年3月27日
駅数:2駅(新設) 櫛田神社前駅及び博多駅
・工事概要
走行区間(駅間):シールド工法
櫛田神社前駅:開削工法
福岡駅:ナトム工法及びアンダーピニング工法
<その他の延伸構想>
2014年に改訂された、福岡市の都市交通基本計画によると、下記の延伸構想が存在しています。
・天神南駅から中洲川端駅を経て築港方面を結ぶ計画と、薬院駅から分岐して博多駅を結ぶ計画も依然として存在しています。
・空港線では、福岡空港駅から東平尾公園方面への延伸構想がありますが、地域住民や飯塚市・篠栗町による活動もあり、福岡空港駅から長者原駅方面への延伸を目指して福岡県が2021年に検討を実施しました。2022年7月に公開された基礎調査の結果によると、4ルートの検討結果が示されていますが、採算をクリアする結果は得られておらず、さらなる検討が進められるとみられます。
・福岡アイランドシティへの鉄道路線整備構想は、西鉄貝塚線の西鉄香椎駅 – 香椎花園前駅間に新駅を設置し、そこから分岐してアイランドシティに乗り入れ、アイランドシティ内には2駅を設置する構想がありましたが、地下鉄 – 西鉄の直通化が前提であり、これには約200~250億円の事業費が見込まれ、採算性などの課題から事実上凍結されています。
・南部地域への環状型鉄軌道の導入も長期的な課題として挙げられています。
<まとめ>
・七隈線延伸事業、天神南 – 博多間は、2023年3月27日に開業を予定しています。
・福岡空港駅から長者原駅方面への延伸を目指し、2021年から福岡県により調査が開始されていますが、事業化の目途は立っていません。
・福岡アイランドシティや福岡市南部地域への鉄道導入の構想もありますが、事業化の目途は立っていません。
-以上-
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