今回は、東京都市計画都市高速鉄道第8号線の延伸構想区間である東京直結鉄道について、関係自治体のHP資料及びWikipediaの情報を基に検討します。
<概略>
東京直結鉄道は、東京都市計画都市高速鉄道第8号線の延伸構想区間の呼称です。「東京直結鉄道」という名称は千葉県野田市や埼玉県吉川市などから「東京に直結する鉄道」の意味であり、主に沿線自治体が「東京直結鉄道」と呼んでいますが、東京8号線延伸構想線の正式な名称ではありません。主に東京8号線延伸構想線の埼玉県内・千葉県内・茨城県内の区間を指します。8号線のほか、11号線(東京地下鉄半蔵門線)の延伸構想も一部重複しています。
東京都江東区の豊洲駅から、下記のルートが検討されています。このうち、豊洲 – 住吉間は事業化が決定しており、住吉 – 押上間は半蔵門線として既に営業しています。
豊洲駅 – 東陽町駅 – 住吉駅 – 押上駅 – 四つ木(四ツ木駅北方付近) – 亀有駅 – 八潮駅 – 越谷レイクタウン駅 – 野田市駅
また、野田市から先への延伸も構想されています。
野田市駅 – 坂東<岩井中央>駅(坂東市)- 下妻駅またはつくば駅
豊洲 – 亀有間と、八潮駅 – 野田市駅間以外に具体的なルート計画はありません。八潮駅 – 野田市駅間は、7駅新設することが構想されています。
2000年に出された運輸政策審議会答申第18号で8号線は「目標年次(2015年)までに整備着手することが適当である路線」(A2) として答申路線のなかに盛り込まれているものの、同答申には「今後開業する常磐新線(首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス)の投資効果を減殺しないよう留意して着工区間、時期等を決定する」としており、8号線の延伸構想は具体化されていませんが、八潮駅から野田市駅間の延伸構想が地元自治体で検討されています。今回は、主に住吉以北の区間の延伸可能性について検討します。
<結論>
・八潮 – 野田市間のみ事業の検討が行われており、押上 – 八潮間に具体的な動きはない。
・野田市により八潮 – 野田市間は事業性があると試算されている。
<住吉 – 四つ木 – 亀有間及び11号線>
8号線構想区間のうち、住吉駅 – 四つ木間は11号線(東京地下鉄半蔵門線)の延伸区間にも当たり、このうち住吉駅 – 押上駅間が営団地下鉄時代の2003年に半蔵門線として開業しています。また、11号線は四つ木から分岐して松戸駅まで延伸する構想ですが、こちらも具体的な計画は進んでいません。東京地下鉄では半蔵門線について、2003年の押上延伸を以って「全線開業」としています。
『東京地下鉄道副都心線建設史』(東京地下鉄、2009年)などに付属の地図では、押上から東向島駅方面に北進し、北東に向きを変えて四ツ木橋の上流側で荒川を渡り、曳舟川跡をなぞるように北北東へ向きを変え、お花茶屋駅付近で京成本線と交差し、亀有駅に向かう計画ルートが示されています。
<亀有 – 八潮 – 野田市間>
郊外地域では、埼玉県内や千葉県内の沿線自治体、とりわけつくばエクスプレス線の直接の恩恵が薄く、東京へ直通する列車も存在しない野田市がこの構想を実現させようと熱望していますが、運輸政策審議会答申第18号などの制限から、野田市などの沿線自治体は独自に「8号線を八潮駅からつくばエクスプレス線と直通運転する案」「北綾瀬駅から千代田線と直通運転する案」などを出し、何とか誘致しようとしています。
しかし、現状具体化しておらず、建設主体も未決定です。東京地下鉄(東京メトロ)は将来の株式上場を控え、有利子負債を圧縮したい意向から、建設距離に対して乗客数が少ない郊外部での新規路線の建設には消極的であり、仮に建設するのであれば埼玉高速鉄道のような第三セクター方式や上下分離方式の採用が必要であると言われており、地元の相当な費用負担は避けられない状況とみられます。八潮 – 野田市間については関係自治体により検討が進められていますが、そのほかの区間に具体的な動きはありません。
<野田市以遠>
合併前から鉄道が無い茨城県坂東市は、野田市などの構想に相乗りする形で、8号線を岩井地区(旧・岩井市)まで延伸させようという構想もあり、岩井市時代から「地下鉄8号線誘致促進協議会」という会が存在しています。また、坂東市からさらにつくば市まで延伸させる構想もあるほか、坂東市を含む県西地域では下妻市方面への延伸を求める協議会が設立されています。ただいずれの案も、茨城県内に入ると石岡市にある気象庁地磁気観測所の半径30km圏内に入り、通常の直流電化ができないため、交流電化もしくは特殊な方式(内房線で採用された直直デッドセクション方式)での直流電化が必要となります。
<事業性>
対象路線:東京11号線延伸(単独整備)
区間:押上~松戸
延長:12.8km
総事業費:3,800億円
輸送密度:35.7~34.2千人/日
B/C:0.3
対象路線:東京8号線延伸(単独整備)
区間:押上~野田市
延長:30.5km
総事業費:5,800億円
輸送密度:40.6~38.9千人/日
B/C:0.5
対象路線:東京8号線延伸(単独整備)
区間:八潮~野田市
延長:約18km
総事業費:2,800~2,500億円
輸送密度: 88.1~76.1千人/日
B/C:1.7~1.2
※東埼玉道路自動車との一体整備を計画、つくばエクスプレス直通構想もあり。
<まとめ>
・押上 – 八潮間に具体的な検討の動きは無い。
・八潮 – 野田市間は関係自治体により検討が進められている。
・八潮 – 野田市間の事業性については野田市の試算によると問題はない。
・野田市から下妻やつくばへの延伸も構想されている。
-以上-
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