今回は、2025〜26年度に水戸線建設中区間が開通予定の東関東自動車道について常総国道事務所のホームページ資料とWikipediaの情報を基に検討します。
<概略>
東関東自動車道は、東京都を起点として茨城県水戸市および千葉県館山市を終点とする国土開発幹線自動車道であり、高速自動車国道です。このうち東京都から千葉県北部を横断して茨城県水戸市に至る路線が東関東自動車道水戸線、千葉県内房に沿って館山市に至る路線が東関東自動車道館山線です。東日本高速道路による営業路線名としての東関東自動車道は、一般に水戸線の高谷JCT – 茨城町JCT間を指しますが、高速自動車国道の路線名から勘案すると、東京外環自動車道の大泉JCT – 高谷JCT間も東関東自動車道水戸線とされます。館山線は京葉道路の宮野木JCT – 千葉南JCT間、館山自動車道、東京湾アクアライン連絡道の木更津JCT – 木更津西JCT間、富津館山道路など別路線名で区別されます。水戸線の建設中区間である潮来IC – 鉾田IC間が今回取り上げる区間で、現在整備事業が進められています。
東関東自動車道は、当初は新空港自動車道として開通しましたが、成田国際空港開業の翌年(1979年)に「東関東自動車道」に名称変更されました。新空港自動車道の名称は、成田JCTと成田空港付近の新空港IC間の道路名として現存します。道路の建設目的は、東京都区部から成田国際空港にアクセスするためでした。全線開通時には、常磐自動車道のバイパス路線となることも期待されています。
2010年4月9日に、国土交通省から潮来IC – 鉾田IC間が、国が運営する直轄施行方式の無料道路として整備されることが発表されていましたが、2017年3月16日に国土交通省は国の社会資本整備審議会事業評価部会で、2017年度から国の直轄事業と併せて有料道路事業も導入し整備を進める方針が決まりました。潮来ICから鹿島港周辺までの延伸も構想されています。
<結論>
・事業継続の判断は、便益に含まれない効果も概算で数値化し、全体の費用便益比で評価すべき。
・用地取得が完了すれば、2026年度までの開通に大きな支障は無いとみられる。
<計画概要>
事業区間:自)茨城県潮来市延方 至)茨城県鉾田市飯名
計画延長・幅員:30.9km・13.5m
道路規格:第1種第3級
設計速度:80km/h
車線数:4車線(当面2車線で整備)
計画交通量:9,600台/日~10,300台/日
事業化:2009年度
事業費:約1,760億円(2021年時点)
設置されるIC等
潮来IC(既設)
麻生IC(新設のため仮称)
行方PA(新設のため仮称)
北浦IC(新設のため仮称)
鉾田IC(既設)
<事業の目的>
・高速ネットワークの形成(ミッシングリンクの解消)
・国際バルク戦略港湾(鹿島港)等や空港(成田空港、茨城空港)へのアクセス向上
・災害時のリダンダンシーの確保
<事業の進捗>
・2009年度より用地取得に着手。
・事業区間(30.9km)の用地取得率は98%(2021年11月末時点、面積ベース)。
2021年に未収用地の行政代執行の請求が行われた。
・引き続き用地取得を推進すると共に、改良工事、橋梁工事を実施中。
・開通目標:2025年度〜2026年度
<課題>
事業費増加:約650億円増額
事業費増加の結果、開通後50年間の費用便益比は0.6と試算されており、事業性は無くなりましたが、便益に含まれない効果がこれを上回るとして事業継続しています。
①跨道橋の下部構造の変更及び関係機関協議による幅員の変更:約70億円
○当初推定した支持層の下に軟弱層があり、支持層をより深い位置に設定する必要が生じ、下部構造等の変更が必要となった。
②発生土の処理・運搬方法の変更:約200億円
○発生土を直接運搬・盛土することが困難となったため、仮置場所への運搬が追加となった。
③調整池(北浦IC(仮称)~鉾田IC)及び既設用水路の切り回しの追加:約90億円
○水路・河川管理者との協議の結果、道路整備による流出増加分を一時貯留するための調整池整備等が追加となった。
④安全対策の追加:約90億円
○警察協議の結果、事故防止等の観点から中央分離帯に剛性防護柵の設置が必要となった。
⑤支障移設物件数等の変更:約90億円
○占用企業者との協議の結果、支障移設物件数が変更となった。
⑥猛禽類保護対策の追加及び立木伐採数の変更:約50億円
○用地取得の進捗に伴い、現地調査した結果、伐採が必要な立木本数が変更となった。
⑦休憩施設の追加:約60億円
○道路利用者へのサービス向上のため、休憩施設の設置が追加となった。
<まとめ>
・2021年度の見直しの結果、事業費が大幅に増額となり、全体の費用便益比が大幅に1を下回る。
・便益に含まれない効果もあるとして、事業継続しているが、判断に客観性を持たせるためには、あくまで数値評価にこだわるべき。
・用地取得のため、土地収用法による行政代執行が行われる予定であり、用地取得が完了すれば、2026年度までの開通に大きな支障は無いとみられる。
-以上-
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