今回は、運輸政策審議会答申第18号で取り上げられた多摩都市モノレールの八王子ルートについて、日本都市計画学会都市計画報告集、関係自治体のHP資料及びWikipediaの情報を基に検討します。
<概略>
多摩センター駅から西進し、唐木田、南大沢、京王片倉を経て八王子までの路線は、運輸政策審議会答申第18号では「今後整備について検討すべき路線」とされており、導入空間の用地確保が進められています。一方、八王子延伸の早期実現は難しいとの見方から、2016年1月に八王子市が単独でLRT(次世代型路面電車)を導入することも検討されましたが、勾配が多く、技術上の問題があることから同年末に導入を事実上見送りました。
2016年の交通政策審議会答申第198号では、「事業性に課題があるため、関係地方公共団体・鉄道事業者等において、事業計画について十分な検討が行われることを期待」としていました。建設費は約1,900億円と試算されています。
<結論>
・事業性に課題があると共に導入空間が確保されていない箇所が複数あるため、当面事業化は無い。
<想定ルート>
公益財団法人日本都市計画学会都市計画報告集No18, 2020年2月によると、既設の多摩センター駅を含め、多摩センターとJR八王子駅間に14駅の設置が想定されています。詳細位置の記載がないため、カッコ内の位置は推定加筆しました。詳細は下記参照。
・駅
多摩センター(既設)
鶴牧(鶴牧三丁目バス停付近)
大妻女子大学(唐木田駅付近)
グリーンウォーク
長池公園(南多摩斎場入口交差点付近)
南大沢(南大沢駅入口西交差点付近)
上柚木(宮上駐在所前交差点付近)
多摩美術大学(多摩美術大前交差点付近)
東京造形大学
八王子ニュータウン(宇津貫公園入口交差点付近)
八王子みなみ野(JR八王子みなみ野駅西口付近)
つどいの森(片倉つどいの森公園付近)
片倉(京王片倉駅付近)
八王子(八王子駅南口付近)
2015年2月に開かれた、八王子市民フォーラムの未来を語る記録集によると、多摩センターから唐木田駅付近までのルートと、京王片倉駅付近のルートが前述の想定とは異なったルートが示されていました。さらに古い1982年12月の東京都長期計画によると、多摩センターから唐木田へ向かうルートは無く、是政方面ルートとのみ接続する様に描かれています。この場合、町田方面延伸ルートとの乗換駅が多摩南野交差点付近に設置されると考えられます。
・導入空間が確保されているとみられる区間
多摩中央署東交差点 – 多摩鶴牧四丁目交差点
多摩鶴牧六丁目交差点 – 南多摩斎場入口交差点
柏木小学校北交差点 – 長久保交差点
柏原橋交差点 – 鑓水交差点
八王子市七国3丁目1番地付近 – 片倉つどいの森公園付近
<事業主体>
未定ですが、モノレール方式で整備されれば、東京都建設局が支柱や軌道桁などのインフラ部を、多摩都市モノレール株式会社が運営基地や変電所、車両などに関わる部分を、それぞれ負担して建設、運行は多摩都市モノレール株式会社が行うものと推定されます。
<仕様>
未定ですが、現行の多摩都市モノレールと同等になるとみられる。
<事業採算性>
・総事業費:1,900億円
・輸送密度:19.7~19.9千人/日
・B/C費用便益比:0.5
・累積資金収支黒字転換年:発散
事業性に課題があるため、関係地方公共団体・鉄道事業者等において、事業計画について十分な検討が行われることが期待されている。
<課題>
1,事業性に課題があるため、事業計画について十分な検討が行われることが期待されている
(多摩ニュータウンをつなぐルートのため、沿線人口が少ない事が主な原因。)
2,多摩センターから唐木田駅までのルート選定と導入空間の確保。
(多摩センター駅への接続が必要かどうか再度検討の必要があると考えられます。是政方面ルートとのみ接続し多摩センター方面へは町田ルートの中間駅で乗換えることで対応も可能と考えられます。)
3,グリーンウォークから南大沢駅付近までのルート選定と導入空間の確保
(長池公園駅を設置しても周辺人口は少なく、事業性は向上しないと考えられます。長池公園北側に短絡ルートを整備することも検討が必要と考えます。)
4,鑓水交差点から八王子市七国3丁目1番地付近までの導入空間の確保
(東京造形大学に駅を整備しても、利用者数は限られるため、必要性の際検討が必要。)
5,片倉つどいの森公園付近から八王子駅までのルート選定と導入空間の確保
(国道20号バイパスを利用して建設した方が用地確保は容易とみられる。)
<まとめ>
・導入空間の道路整備が進んでいる箇所もあるが、ルート未確定区間や導入空間が確保されていない箇所が複数ある。
・事業性に問題があるため、事業計画の練り直しが必要となっている。
-以上-
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