今回は、東海道貨物支線の貨客併用化について、東海道貨物支線貨客併用化整備検討協議会のホームページ資料とWikipediaの情報を基に検討します。
<概略>
2000年1月、運輸省(現国土交通省)運輸政策審議会答申第18号において、「東海道貨物支線の旅客線化等及び川崎アプローチ線(仮称)の新設」として、品川駅およびりんかい線東京テレポート駅から浜川崎駅を経て桜木町駅、浜川崎駅と川崎駅を結ぶ路線がB路線(今後整備について検討すべき路線)として取り上げられました。
これを受けて、同年6月に沿線の自治体などによる「東海道貨物支線貨客併用化整備検討協議会」が設置されました。協議会では、2012年に具体的なルートを公表、品川駅・東京テレポート駅 – 浜川崎駅 – 桜木町駅間総延長33kmのうち18kmで既存線を活用、15kmは新線を建設するとしています。この計画が実現した場合、品川 – 浜川崎間の所要時間は24分から16分に、桜木町 – 浜川崎間は29分から12分に、桜木町 – 東京テレポート間は43分から29分に短縮される見込みです。
2016年4月に示された交通政策審議会答申第198号においては、「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」と位置付けられています。
<結論>
・事業性の確保に必要な需要の創出に繋がる沿線開発が必要となっており、当面事業化は無い。
<東海道貨物支線>
東海道貨物支線は、東海道本線に並行し、東京・川崎・横浜の臨海部を通る貨物路線で、東京圏における列車増発のために、生産・流通拠点のある臨海部に整備されました。全国を結ぶ鉄道貨物輸送網の一部を形成し、その拠点となる東京貨物ターミナル駅は、京浜港や羽田空港と連携した輸送も行っており、国内最大の鉄道コンテナ輸送量を誇っています。
東海道貨物支線貨客併用化整備検討協議会では、東海道貨物線の東京貨物ターミナル駅から鶴見駅までと、鶴見駅から桜木町駅に至る高島線を東海道貨物支線と呼んでいます。
<ルート>
東海道貨物支線貨客併用化は、既存線を貨客併用化するとともに、一部を新線でつなぎ、新たな旅客鉄道を整備する構想です。総延長約33kmのうち、約18kmは既存線利用区間、約15kmは新線整備区間となります。
品川、東京テレポートから天空橋、浜川崎を通り、桜木町に至るルートを検討しています。天王洲アイル、東京貨物ターミナル付近、天空橋、塩浜付近、浜川崎などに中間駅の構想があります。交通政策審議会答申第198号で示されている浜川崎駅と川崎駅を結ぶ路線は、東海道貨物支線貨客併用化整備検討協議会の構想路線図には含まれていません。
<収支予測>
延長:33.3km
総事業費:5,500億円
輸送密度:30.8~30.2千人/日
B/C(費用便益比):0.3
2016年の交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会資料によると、費用便益比は0.3となっており、事業としては成り立たない。
<効果>
・京浜臨海部の活性化に貢献
貨客併用化により日本を代表する工業地帯である京浜臨海部が活性化します。
・東京-川崎-横浜を結ぶ新鉄道ネットワークの形成
臨海部アクセスの向上、羽田空港へのアクセスの向上、災害時にも活躍する多様なルートの確保等が期待されています。
現状と整備後の所要時間の例
品川 – 浜川崎間 現状:24分 → 整備後:6分
桜木町 – 浜川崎間 現状:29分 → 整備後:12分
桜木町 – 東京テレポート間 現状:43分 → 整備後:29分
・既存線の混雑緩和の期待
東海道貨物支線の貨客併用化の検討ルートに並行する京浜東北線、東海道本線、横須賀線、京浜急行本線では、朝のピーク時を中心に混雑が生じています。貨客併用化の実現により、本路線への乗り換えによる既存線の混雑緩和が期待されます。
・環境改善に貢献
鉄道は自動車に比べてCO2 排出量の少ない、環境にやさしい交通機関です。鉄道が利用しやすくなり、自動車利用から鉄道利用に転換することでCO2排出量が削減され、環境改善への寄与が期待されます。
<まとめ>
・費用便益比は1.0を下回っており事業として成り立たないため、需要の創出に繋がる沿線開発が必要となっている。
・2019年以降に目立った活動は行われていない。活動の再開は、コロナ禍が落ち着いた後に、並行する既存線の需要動向を見極めてからになるとみられる。
-以上-
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