北海道並行在来線【函館線(函館・小樽間)】

 今回は、北海道新幹線の並行在来線である函館線の函館駅 – 小樽駅間について、北海道新幹線並行在来線対策協議会の資料とWikipediaの情報を基に検討します。

<概略>

 整備新幹線の並行在来線は、JRの経営のまま残った区間も一部ありますが、原則JRから経営分離され、第三セクター鉄道に転換または廃止されています。これは、高額な新幹線の施設と地方閑散線区に転落した並行在来線を両方所有運営することによる、JRの負担を軽減する措置です。1996年12月25日の「整備新幹線の取扱いについて 政府与党合意」で「建設着工する区間の並行在来線については、従来どおり、開業時にJRの経営から分離することとする」としており、今後開業する整備新幹線の並行在来線については、同様の措置とする予定です。並行在来線では、沿線の利用者や貨物列車および並行在来線の枝線の扱い、新事業者の経営をどのように支えるかが課題となっています。

 今回は、建設中の北海道新幹線である新函館北斗駅 – 札幌駅間の並行在来線として経営分離が決定している函館線の函館駅 – 小樽駅間について取り上げます。

<結論>

・沿線の人口減少や類似路線の運営状況を考慮すると、長万部駅 – 小樽駅間の廃線はやむを得ない。

・函館駅 – 長万部駅間は旅客維持を前提としない新たなスキームが必要となっている。

<ルート>

 建設中の北海道新幹線(新函館北斗駅 – 札幌駅間)の並行在来線について、北海道新幹線並行在来線対策協議会の中で対応の方向性について協議が行われています。協議会を円滑に運営するため、下記のブロック会議が設置されている。

(1)後志(しりべし)ブロック会議(長万部・小樽間)

(2)渡島(おしま)ブロック会議(函館・長万部間)

<後志ブロック>

・収支予測

             初期投資 2030年度 2040年度 30年間累積

第三セクター鉄道(長万部~小樽):152.8  ▲ 22.8  ▲ 23.5  ▲ 864.6 (億円)

バス運行(長万部~小樽):     22.1  ▲ 0.7   ▲ 1.0   ▲ 70.2  (億円)

第三セクター鉄道(余市~小樽): 61.8  ▲ 5.4   ▲ 6.0   ▲ 258.2 (億円)

+バス運行(長万部~余市)

鉄道を維持した場合は巨額の累積赤字が発生すると試算している。

本予測に対する批判はあるが、単年度予測の前提条件は悪くない。

・新たなバスルート

A.長万部・黒松内間【4往復 】

B.黒松内・倶知安間【4往復 】

C.蘭越・倶知安間 【1往復 】

D.ニセコ・小樽間【8往復 】

E.銀山・余市間【2往復 】

F.余市・小樽間【4.5往復 】

G.余市・小樽築港間(塩谷・最上経由)【4往復 】

・検討の方向性

2022年3月27日に函館線長万部・小樽間の廃止とバス転換が決定しました。沿線人口の見通しや、各年度の黒字化が難しいこと、そして他路線で第三セクター化した並行在来線の経営状況を鑑みると、廃止の判断はやむを得ない。

<渡島ブロック>

・収支予測

               初期投資 2030年度 2040年度 30年間累積

第三セクター鉄道(函館~長万部):  317.3  ▲ 18.8  ▲ 20.3 ▲ 944.2 (億円)

バス運行(函館~長万部):      36.6   ▲ 2.5  ▲ 2.0 ▲ 130.4 (億円)

第三セクター鉄道(函館~新函館北斗):160.9 ▲ 11.5  ▲ 12.8 ▲ 565.4 (億円)

バス運行(新函館北斗~長万部)

貨物列車の路線使用料を見込んでも、利用者が少なく赤字が積み上がる。

人口減少していく地元自治体が、鉄道旅客廃止に傾くことは止むを得ない。

・想定ルート

 第三セクター鉄道(函館~長万部)

  函館 – 新函館北斗 – 大沼 – 大沼公園 – 森 – 八雲 – 長万部

              –  鹿部  –

 バス運行(函館~長万部)

  函館 – 新函館北斗 – 大沼 – 大沼公園 –    – 森 – 八雲 – 長万部

            – 大沼 – 大沼公園 – 鹿部 –

第三セクター鉄道(函館~新函館北斗)

  函館 – 新函館北斗

バス運行(新函館北斗~長万部)

  新函館北斗 – 大沼 – 大沼公園 –    – 森  – 八雲 – 長万部

          – 大沼 – 大沼公園 – 鹿部 –

・検討の方向性

 長万部町は住民の足としては不要であり、函館線の旅客廃止を求めている。将来の人口減少もあり、巨額の赤字を負担してまで鉄道を存続させる意義がないと地元の市町村が判断することは止むを得ない。

 貨物列車の運行を維持したいのであれば、国と北海道で別スキームの検討が必要。貨物列車廃止は、JR貨物が委託したみずほ総研の調査結果から難しいと判断されている。

<まとめ>

・函館線長万部 – 小樽間の廃止は、沿線人口の見通しや、需要予測、他路線で第三セクター化した並行在来線の経営状況を鑑みると、廃止は止むを得ない。

・函館線函館 – 長万部間は長万部町が旅客廃止を求めており、沿線の足として不要な鉄道区間があることが明らかになっている。

・函館線函館 – 長万部間は旅客維持を前提としない別のスキームの検討が必要となっている。

-以上-

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