今回は、2022年3月16日発生した福島県沖地震の東北新幹線被害状況について、JR東日本ニュースリリースとWikipediaの情報を基に検討します。
<概略>
2022年3月16日23時36分ごろ、福島県沖の深さ60kmを震源として、M7.3の地震が発生し、宮城県登米市・蔵王町と福島県相馬市・南相馬市・国見町で最大震度6強を観測しました。これにより、東北新幹線「やまびこ223号」(H5系+E6系連結の17両編成)が福島駅 – 白石蔵王駅間の宮城県白石市内で営業運転中に脱線する事故が発生しました。17両編成のうち13号車以外の16両が脱線し、合わせて68の車軸のうち60軸がレールから外れていました。また、高架橋の損傷や電柱の傾斜などの被害が発生したほか、高架橋や駅ホームの土台などの土木構造物も複数個所に損傷が確認されました。
今回は、2021年2月13日福島県沖地震の被害と比較しながら、今後の復旧の見通しと地震対応の課題について検討します。
<結論>
・大きな人的被害や構造物の破壊が発生しなかったことはこれまで対策の成果。
・在来線よりも大きい損害を抑える対策や脱線復旧を早める対策の検討が望まれる。
<地震情報>
・発生日時 :2022 年 3月 16 日 23 時 36 分
・震源 :福島県沖
・規模 :マグニチュード 7.3 (速報値)
・震源の深さ: 60 ㎞(暫定値)
・最大震度 :6強 宮城県 登米市、蔵王町、福島県 国見町、相馬市、南相馬市
・津波の状況:津波注意報発令(宮城県、福島県)
1年前の2021年2月にもほぼ同規模の地震が発生している。この2021年の地震の地震活動域は、2022年の地震活動域の南側に隣接している。
<被害状況>
2022年の地震による被害
電柱被害:79本
架線断線:2箇所
架線金具等の損傷:約550箇所
土木設備被害:約60箇所
軌道変位・損傷:約300箇所
駅設備被害:13箇所
被害状況合計:約1,004箇所
車輌の脱線:1編成
2021年の地震による被害
電柱被害:約40本
架線断線:6本
架線金具等の損傷:約550箇所
土木設備被害:約74箇所
軌道変位・損傷:約220箇所
駅設備被害:約20箇所
合計:約940箇所
・震源域の違いから被害エリアが2021年に比べて北側にずれている。
・地上設備の被害は2021年2月の地震とほぼ同程度の被害状況となっている。
・在来線に比べて、新幹線の被害が大きいのがどちらの地震でも特徴的。
・今回の地震では脱線が発生したのが2021年2月の地震との大きな違い。
<脱線の状況>
・基本情報
場所:福島駅 – 白石蔵王駅間(白石蔵王駅から福島方面に約2km付近)
列車数:東京発仙台行「やまびこ223号」(17両編成のうち16両が脱線)
乗客数:78人(乗員を含む)
死者:0人
負傷者:4人
・地震発生直後のやまびこ223 号の走行・停止状況
- 時34 分 1 回目の地震発生(M6.1)
①該当エリアの沿線地震計警報発令
② 非常ブレーキ動作(約150km/h で走行中)
③ 停車(23 時35 分)
23 時36 分 2 回目の地震発生(M7.4)
脱線した時刻は特定されていない。
・脱線状況
17両編成のうち13号車以外の16両が脱線し、合わせて68の車軸のうち60軸がレールから外れて、50 軸は逸脱防止ガイド等がレールにかかる状態にあった。
・脱線車両の復旧・撤去計画
3 月20 日~:ジャッキアップでの載線作業開始
~3 月24 日:17 号車~8 号車までの載線が完了(3/25 以降も載線作業を継続)
3 月29 日~:クレーンを使用した載線作業(5~7 号車)
~4 月2 日頃:白石蔵王駅への収容作業完了
脱線車両の撤去までに2週間強を要する見込み。
<復旧の見通し>
・3月21日まで那須塩原~盛岡間で運転を見合わせていたが、3月22日以降は、那須塩原~郡山間と一ノ関~盛岡間の運転を再開し、臨時ダイヤで運行。郡山~一ノ関間は引続き運転を見合わせ、在来線で臨時列車を運転。
・不通区間の運転再開は、郡山~福島間は4月2日頃、仙台~一ノ関間は4月4日頃の運転再開を計画。また、4 月20 日前後の全線運転再開を目指して工事を進行中。
※全線運転再開に35日程度を要する見込みで、2021年2月の地震では運転再開までにかかった11日よりも24日程度長くかかる見込み。
<迂回路>
2022年3月24日以降(変更の可能性あり)
羽越本線(酒田~秋田):臨時快速列車運転(延長運転)3/18~当面の間
東北本線(郡山~仙台):臨時快速列車運転3/22~当面の間
東北本線(仙台~一ノ関):臨時快速列車運転3/22~当面の間
常磐線(いわき~仙台):臨時快速列車運転3/24~当面の間
※2021年2月の福島県沖地震とほぼ同等の迂回列車対応となっている。
<まとめ>
・地上設備の被害は2021年2月の地震とほぼ同程度の被害状況となっている。
・在来線に比べて新幹線設備の被害が大きく、被害を抑える対策が必要。
・脱線事故はあったが死傷者ゼロとなっており、これまでの対策の成果と言える。
・運転再開までの日数は2021年2月の地震よりも24日多い35日程度かかる見込み。
・脱線車両の撤去に時間を要しており、脱線復旧を早める対策も必要。
-以上-
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