今回は2022年1月28日に、検討委員会によってルート選定されたことが町田市より発表された多摩都市モノレールの、多摩センター駅から町田駅間の延伸事業についてWikipediaと関係自治体HPの情報を基に検討します。
<概略>
1981年度に発表された多摩都市モノレールの構想路線は現営業区間も含めると約93kmあり、このうち上北台駅から箱根ヶ崎方面、多摩センター駅から町田および八王子方面への延伸が検討されています。その中で、多摩センター駅から南進して町田駅に至る路線は、運輸政策審議会答申第18号で「今後整備について検討すべき路線」とされており、既に多摩市内と町田市内の一部区間で導入空間を確保しています。
2016年の交通政策審議会答申第198号では、「導入空間となりうる道路整備が前提となるため、その進捗を見きわめつつ、事業化に向けて関係地方公共団体・鉄道事業者等において具体的な調整を進めるべき」され、建設費は約1,700億円と試算されていました。
2022年1月28日、「多摩都市モノレール町田方面延伸ルート検討委員会」によって、野津田高校、日大三高、小山田桜台団地、桜美林学園等各施設の近くを通過する「己」の字形のルートを含むルートが選定されたことが町田市より発表されました。
<結論>
・多摩都市モノレール町田方面延伸ルート検討委員会でのルート決定過程は定量的でなく根拠が不明。
・町田市内のまちづくりのみを評価項目として出した今回のルート選定の結論は正しくない。
<選定されたルート>
多摩都市モノレール町田方面延伸ルート検討委員会で選定されたルートは全長約16kmで、下記の様なルートを通る計画となっています。
多摩センター駅 → 小野路 → 野津田公園 → 図師 → 小山田桜台 → 桜美林学園 → 町田市民病院 → 町田高校 → 町田駅
<今回検討されたルート案>
A案(198号答申が想定したルート)
多摩センター駅 → 小野路 → 小山田緑地 → 小山田桜台 → 桜美林学園 → 忠生 → 町田市民病院 → 町田高校 → 町田駅
B案(市内主要拠点を概ね通過するルート)
多摩センター駅 → 小野路 → 野津田公園 → 図師 → 小山田桜台 → 桜美林学園 → 忠生 → 町田市民病院 → 町田高校 → 町田駅
B’案(B案の短縮ルート)
野津田公園から図師付近で短絡する案。
C案(多摩センター~町田間の速達性重視したルート)
多摩センター駅 → 小野路 → 野津田公園 → 図師 → 忠生 → 町田市民病院 → 町田高校 → 町田駅
<各ルートの評価>
いずれのルートでも費用対効果は確保できるものとされ、まちづくりに関する評価が高いB案が採用された。需要や、費用対効果が明らかにA案の方が高いため、B案が採用された根拠に経済合理性は無い。
<事業主体>(想定)
・インフラ部 東京都建設局
・インフラ外部 多摩都市モノレール(株)
開業している多摩センターから上北台までの区間は、東京都建設局が支柱や軌道桁などのインフラ部を、多摩都市モノレール株式会社が運営基地や変電所、車両などに関わる部分を、それぞれ負担して建設しました。運行は、多摩都市モノレール株式会社が行っています。延伸部分もこの役割分担が踏襲されるとみられます。
<仕様>
・区間 多摩センター駅~上北台駅〔開業部(延長約16km)〕
上北台駅~箱根ヶ崎駅 〔延伸検討部(延長約7km)〕
多摩センター駅~町田駅 〔延伸検討部(延長約16km)〕
・輸送システム 跨座型モノレール
・定員 416人(4両編成)
・表定速度 約27km/h
・所要時間 約36分(多摩センター駅~高幡不動駅間約13分、高幡不動駅~立川北駅間約11分、立川北駅~上北台駅間約12分)
<効果>
・移動が便利に
モノレールは定時性・速達性に優れています。例えば、小山田桜台団地付近から町田駅まで17分の短縮。(バス約35分⇒モノレール約18分)小山田桜台団地付近から立川駅まで19分の短縮。(バス約53分⇒モノレール約34分)
・人と環境にやさしいまちに
ゴムタイヤで走行するモノレールは、騒音・振動が少なく、排気ガスも出しません。例えば、1人を1km運ぶために排出するCO2の量は自動車284gに対してモノレールは19gです。また、道路渋滞が緩和されて交通事故の減少が期待されます。
・沿線の魅力が向上
モノレール駅周辺のにぎわいが増して地域が活性化します。また、人口の増加や資産価値の増大が期待されます。
・都市間交流が進みます
多摩地域の都市を南北に結ぶ公共交通網と道路網が整備されることで、都市間交流が進み、多摩地域の発展が期待されます。
<進捗と課題>
・多摩都市モノレール町田方面延伸ルート検討委員会から提案されたルートは決定事項ではなく、駅設置場所等も未確定。
・今後、事業採算性等の詳細検討が行われる。
・導入空間の道路が未整備の箇所が残っている。
<まとめ>
・多摩都市モノレール町田方面延伸ルート検討委員会で今回評価された「まちづくりに関する評価」は定量的でなく根拠不明。
・多摩地域の都市間交流もモノレール建設の目的であり、町田市内のまちづくりのみを評価項目した今回の結論はおかしい。
-以上-
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