今回は日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)がまとめた津軽海峡トンネルプロジェクトについて、JAPICの今後推進すべきインフラプロジェクト資料及びWikipediaの情報を基に検討します。
<概略>
日刊建設工業新聞2020年12月10日1面によると、日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)は2020年12月9日、推進が求められるインフラプロジェクトについて国に提言し、国家的に推進する事業として青森県と北海道を結ぶ「津軽海峡トンネル」の新構想を発表しました。
JAPIC津軽海峡トンネルプロジェクトは青函トンネルに並行する第2ルートとなり、総延長は約31キロ(断面内径15.0メートル)。シールド工法を採用し、海底下の最小土被りは30メートルになるとしています。自動運転車両用の道路と貨物列車用の鉄道(単線)で構成され、必要な事業費は7,200億円と試算されています。実現すれば貨物列車と北海道新幹線が共用する青函トンネルを新幹線専用にでき、また、新幹線の高速化や物流量の増加によって、北海道と青森県で年間878億円の経済効果が期待できるとしています。
<結論>
・自動運転技術への対応と、道路や鉄道の容量が必要十分かどうかは検討の余地がある。
・事業採算性は実現可能性の高い数値が出てきたが、実現には更に詳細な検討が必要。
・道路トンネルとして採算が取れる可能性は高く、詳細な検討を国が始めるべき。
<検討案概略>
トンネル概要:自動運転車専用道路・鉄道貨物(単線)を併用したトンネル
(延長L=約31㎞、内径Φ15.0m)
自動運転技術普及の見通し:自動運転が、津軽海峡トンネル供用時に100%にならない想定。
パレット台車輸送の併用(自動運転未対応車を積載)を想定。
概算事業費:7,200億円(津軽海峡トンネルの事業費、税抜)
アプローチ設備:アクセス道路の整備(別途整備費:約2,000億円)
・北海道側(トンネル~将来建設予定の高速道に直結)
・青森側(トンネル~青森ICまでの約60㎞を整備)
在来線(貨物)との接続(別途整備費:約1,500億円)
・北海道側(~木古内:35km)
・青森側(~三厩:10km)
<トンネル詳細>
・自動運転による安全性の向上から、道路幅員を縮小し内径Φ15.0mを実現
道路構造令の特例により、道路幅員(路肩)を50㎝(25㎝×両側)縮小
故障発生時に、車両が離合可能な幅員を確保(片側W=5.75m)
国際海上コンテナ車の規格(40ft背高、H=4.1m)へ対応
・前後進型緊急車両(自動運転)の配備
・現状の貨物運行頻度を維持した単線鉄道貨物の併設(上下線:51本)
・セグメント、継ぎ目の止水性・強度を高め二次覆工を省略(海外では実用化済)
・最大勾配・土被りの変更によりトンネル延長を短縮
・トンネルの高品質化により維持管理費を削減し長寿命化を実現
・Iot、AIを駆使した最新鋭の防災システムを構築
・工程は調査設計・施工・アクセス道の整備等を含め約15年を見込む
<事業スキーム>
BTO方式、サービス購入型(アベイラビリティペイメント)
<事業採算性>
・前提条件
通行台数:大型車(3,600台/日)、普通車(1,650台/日)
通行料金:大型車(18,000円/台)、普通車(9,000円/台)
鉄道トンネルリース料36億円
電力トンネル使用料4億円
維持管理費(経費込み)36億円
・収支
ケース1
金利1.161%で割賦払いした場合(32年償還)(基準金利0.361%+上乗せ金利【スプレッド】0.8%)
ケース2
財政投融資を活用し、金利0.6%(現行の財政投融資の金利)で割賦払いした場合(29年償還)
<主な効果>
1,所要時間の短縮・コスト削減(函館~青森間)
・所要時間50%短縮、大型車の物流コストが46%削減
2,経済効果
・物流の増加、交流人口・消費増加(観光)による経済効果:総額878億円/年
物流の増加による経済効果(道内から移出される農畜産物を対象)
⇒340億円/年【約60万t】
・交流人口・域内消費増加(観光)による経済効果⇒538億円/年
(北海道側:393億円/年、青森側:145億円/年)
3,物流、人流の効率化
・青函トンネルの新幹線専用化により、本来の高速走行が可能となり、利用率が向上。
・鉄道貨物による、本州への安定輸送が可能となる。
・車両の自動化による無人運転の実現により、ドライバー不足解消。
<まとめ>
・自動運転技術の導入を前提としているが、未だ確立された技術ではなく、普及していない想定をしておく必要がある。また、道路や鉄道の容量が必要十分かどうかは検討の余地がある。
・事業採算性は実現可能性の高い数値が出てきたが、アプローチ設備の費用などは含まれていないとみられ、トンネルの工法や維持管理方法も、詳細な検討が必要であるとみられる。
・道路トンネルとして採算が取れる可能性は高く、詳細な検討を国が始めるべき。
―以上―
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