第二青函トンネル【第二青函多用途トンネル構想】

 今回は第二青函多用途トンネル構想研究会がまとめた第二青函多用途トンネル構想について、第二青函多用途トンネル構想研究会報告書及びWikipediaの情報を基に検討します。

<概略>

 現在の青函トンネルには以下の二つの課題があると考えられます。

 課題1:新幹線と貨物列車との共用走行により新幹線の低速走行が必要

 課題2:北海道、本州間のトラック輸送に必ず海上輸送が介在することによる輸送コスト高、輸送時間の自由度制限など北海道の食料生産等、産業への大きな制約が存在

 課題1は、当面の課題で国土交通省も検討を進めており、いくつかの解決策が提案されています。JAPIC及び日建連の構想もこの課題の解決策にあたり、課題2は、北海道経済の将来発展を見通した場合、大きなテーマです。JAPICの構想は、この課題に解決策を提案していますが、JAPICの構想では有人走行は実現できず、乗用車の走行も想定していません。第二青函多用途トンネル構想は、現行の道路の安全水準で、有人自動車走行道路トンネルの可能性を検討したものです。

 有人運転に対応した道路専用トンネルとして、「第二青函多用途トンネル構想研究会」が発表した構想は、延長30 km、内径14.5 mの円形トンネル、事業費7,229億円、工期10年から15年、道路構造規格第1種第3級、設計速度80 km/h、上部に完成2車線本線車道と下部に緊急車両用道路及び避難路の想定計画を発表しており、レベル3以上の自動運転に対応する場合に内径を2 m程縮小することも織り込まれています。

本州と北海道を結ぶ道路については、本州北海道連絡橋構想として1994年頃に地元が大間戸井間に津軽海峡大橋の誘致活動を行っていたが、莫大な建設費用や維持・管理費用及び技術的な課題などから、現在は検討されていません。

<結論>

・有人自動車運転と言う現行の条件下で、経済的に道路トンネルが建設可能である可能性が確認された。

<検討案概略>

・路線

現行トンネルに出来るだけ平行に整備することとする。

トンネル延長30㎞

・構造

トンネルの多用途化を図るために下段に空間ができる円形を想定。

 中央分離構造での防護策とスリット壁の二つの構造を示しているが、基本構造は同じ。

 内径:14.5m

道路構造規格:第1種第3級

設計速度:80km/h

有人自動車運転

 有人走行の現行基準に従い、走行車線3.5m、路肩1.75m、の片側1車線、中央分離として隔壁(スリット式)、管理用通路を配置。

緊急車両通行路と乗車員の避難路を配置し、内径14.5mの円形の構造を想定する。

自動運転(Level3以上)が実現すれば、トンネル内径を2m程度縮小が可能。

換気対策

トンネルアプローチ部の陸上部分に換気塔を設置し、トンネル内はファンによる排出を行なう(換気方式:縦流換気方式 ジェットファン方式+坑口集中排気方式(ジェットファン圧力補正付))。想定通行台数:4,000台/日、想定速度100km/hの時、工費:229.0億円、年間電気料:11.5億円。

PA設置

 PAの設置間隔を30分とすることができるため、時速60㎞以上の運用であれば、トンネル内に休憩施設を設置しない事が可能で、陸上のトンネルアプローチ部分にPAを設置する想定としています。(海底にPAを設置する場合の概算工事費は、1,100億円とされた。)

避難・救急搬送通路

 通常の設備以外に、避難・救急搬送通路の設置が必要となる。避難・救急搬送通路は、トンネルを円形構造にして下部を人の避難通路及び救急搬送通路として利用する。

<施工方法>

 施行には、現行青函トンネルとほぼ同様な課題があり、トンネル本体の周辺に作業坑等があるため、離隔距離を考慮する必要がある。技術的には、外部環境想定の確実性を高めることでトンネル工法として確立された技術で施工可能と考えられ、現在の技術の進歩により、シールド工法、TBM工法により、施工可能と考えられる。

<建設事業費>

 建設事業費7,229億円 トンネル延長30㎞、内径14.5m

 JAPIC構想の海底トンネルを考慮した試算は、仕上がり内径10.0mで4,200億円としており、この工費をベースとして、現在の首都圏大型シールド工事の工事費を参考に、内径14.5mにした場合の試算である6,900億円。非常駐車帯を750m間隔で設置する100億円。換気設備(設計速度100㎞ /hの場合)の229億円。

<事業性検討>

共通部分

総工費:7,229億円

支出:80.1億円

走行台数4千台/日のケース

収入:230.0億円

キャッシュフロー149.9億円

投資回収可能年数年:48.2年

走行台数3千台/日のケース

収入:172.5億円

キャッシュフロー:92.4億円

投資回収可能年数年:78.3年

<経済波及効果>

 年間の総消費額は走行台数4千台/日の場合で730億円、走行台数3千台/日の場合でも365億円と試算されています。この数字は、現在の来道者数が約5百万人となっているなかでの数字であり、相応の効果が発現するものと期待されています。また、年間の運賃削減効果は、ケースを問わず年間117億円となっています。

 ここでは計数的な試算は行っていませんが、自動車での移動に際しての北海道~本州の所要時間の大幅な短縮も、経済面のみならず様々な効果をもたらすものと考えられます。さらに、道路交通で北海道~本州がつながることにより、他の交通機関との補完も強固なものになり、本州以西との一体感はかなり強まるものと考えられます。

<まとめ>

・現行の技術基準に照らして概略の検討をした結果、経済的に建設可能と確認され、更なる自動車技術の革新の進展により建設コストの低廉化(ていれんか)及び長距離トンネルにおける自走の安全性の確保の可能性が見えてきた。

・30㎞の海底トンネル部分のみの検討であり、既存の高速道路ネットワークへの接続については検討していないため、実現へ向け更なる検討が必要。

―以上―

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です