第二青函トンネル【日本建設業団体連合会 鉄道工事委員会 案】

今回は第二青函トンネルの日本建設業団体連合会鉄道工事委員会案について、第二青函多用途トンネル構想研究会報告書、乗りものニュースの記事及びWikipediaの情報を基に検討します。

<概略>

2014年-2015年頃、複数のゼネコン、コンサルタント会社により「鉄道路線強化検討会」が発足し、2016年に青函トンネルの西側に、貨物専用の第2青函トンネルを建設する構想を取りまとめています。工費は約3900億円、工期は約15年を想定しています。報道ベースでは、日本建設業団体連合会鉄道工事委員会案と鉄道路線強化検討会案は、同一のものと考えられます。今回は、日本建設業団体連合会鉄道工事委員会案の情報を鉄道路線強化検討会案の情報で補完しながら、検討していきます。

背景として、2004年に国土交通省が「平成16年度の整備新幹線建設推進高度化等事業」における「青函トンネルにおいて貨物列車が新幹線上を走行する場合の安全性の検討などを行う」調査を実施し、それを受けて2012年7月には国土交通省内で「青函共用走行区間技術検討WG(ワーキンググループ)」も設置され、その議事録で「北海道新幹線札幌延伸の10年後には現在の青函トンネルも大改修が必要となり、そのときに減速しながらの作業となってしまっては意味がない」という意見もあった事や、2016年12月の豪雪で航空便が欠航した際も札幌-新函館北斗間の特急列車が大混雑となった事や貨物列車の増発に現状の青函トンネルでは容量不足であるという需要の必要性が挙げられています。

<結論>

・事業スキームの提案は無いが、コストと工期が提示された意義は大きい。

・道路トンネルの必要性も検討が必要。

<検討案概略>

 一本の第二青函トンネルを整備し、貨物列車と新幹線走行を分離することにより、青函共用走行問題の根本的解決を図り、新幹線の高速化・貨物輸送の安定化を実現するため、第二青函トンネルとして、下記3ケースが検討された。

ケース① 新設線を新幹線専用で複線とし、現在線を在来(貨物専用)線とする

ケース② 現在線を新幹線専用とし、新設線を在来(貨物専用)線で複線とする

ケース③ 現在線を新幹線専用とし、新設線を在来(貨物専用)線で単線とする

※単線案は、すれ違い施設7か所(本州側と北海道側のアプローチ区間に1か所ずつ。第2青函トンネル内に5か所)貨物列車の現在の運行本数を確保する想定。

いずれも新幹線または貨物列車走行を想定しており、自動車走行は想定していない。

<構造概要、建設コスト及び建設期間>

 現トンネルの最急勾配は1.2%ですが、気動車の能力向上により新幹線専用が2.0%、貨物専用が1.5%としています。トンネル形状は、()(てい)形、施工方法は、山岳トンネル工法のNATM工法を想定しています。建設コスト及び建設期間は、青函トンネル部分を、陸底部、海底部に分けて、在来線との接続線はアプローチ部として算定しています。

工法の想定では、竜飛(青森)側と吉岡(北海道)側の工事基地に斜坑と作業坑等を設置し、海底部には作業坑を設置しない想定です。土砂の排出や資材の搬入は、本坑の後ろを作業坑として使用します。トンネル掘削量が少ない分、コストは下がりますが、作業効率が悪くなるため、建設期間は長くなります。単線トンネルの建設期間が長くなっているのは、トンネルの断面積が小さく、作業効率が悪いためです。

ケース① 新幹線専用(複線)

青函トンネル延長:54.9㎞、コスト:5,600億円

アプローチ部延長:31.9㎞、コスト:2,010億円

建設期間:15.9年

ケース② 貨物専用(複線)

青函トンネル延長:57.0㎞、コスト:5,407億円

アプローチ部延長:27.6㎞、コスト:1,393億円

建設期間:15.8年

ケース③ 貨物専用(単線)

 青函トンネル延長:57.0㎞、コスト:3,165億円

 アプローチ部延長:23.2㎞、コスト: 726億円

 建設期間:19.2年

 検討結果から、ケース③の貨物専用(単線)が3,165億円と建設費が最も安くなっている。ただし、建設期間が19.2年と最も長い。

<事業スキーム>

資金調達方法・事業主体・整備主体などは提案していない。

<整備効果>

・新幹線による速達性の実現

東京~新函館北斗間 現在:4時間2分→3時間44分

東京~札幌間 5時間1分→4時間43分 350km/h走行:3時間57分

参考 東京~広島間 3時間50分

・新幹線開業による鉄道シェアの拡大

 鉄道シェアを東京~広島間並に引き上げられる可能性がある。

東京~札幌間の市場占有率 飛行機:97%(912万人)

JR:2%(17万人)

東京~広島間の市場占有率 飛行機:34%(188万人)

新幹線:65%(358万人)

※国土交通省 平成25年度 旅客地域流動統計

・複線案でカートレイン等の運行も可能に

 複線案を採用すれば路線容量に余裕が生まれるため、車を貨車に乗せて運ぶカートレイン等も運行可能になる。

<まとめ>

・事業スキームの提案は無いが、本検討案でコストと工期が提示された意義は大きい。

・現状の課題を解決するのであれば、貨物専用の単線トンネルで十分まかなえる。

・本州と北海道間の自動車移動について道路トンネルの必要性との兼ね合いを検討する必要がある。

―以上―

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