下関北九州道路【実現に向けて動き出した】

 今回は下関北九州道路について、国土交通省のHP資料及びWikipediaの情報を基に検討します。

<概略>

 下関北九州道路は、山口県下関市彦島から福岡県北九州市小倉北区に至る約8kmの地域高規格道路の候補路線です。通称下北道路とも呼ばれ、海上部と前後取り付け部のみを指し関門海峡道路、第二関門橋とも呼ばれています。

 現在、関門海峡を横断する交通網として、道路網の関門橋と関門国道トンネル、鉄道網の関門鉄道トンネル(山陽本線)、新関門トンネル(山陽新幹線)がありますが、1973年に開通した関門橋や1958年に開通した関門国道トンネルは、供用開始から年月が経過し、老朽化による補修工事等のため渋滞や通行止めが度々発生しています。加えて関門鉄道トンネル以外の交通機関は壇ノ浦から門司港にかけてのルートを通過しており、異常気象や不測の事態などで壇ノ浦付近が通行不能になると、代替道路がなくなる事態に陥っています。この状況を解消するため、下関市彦島から北九州市小倉北区を横断する新たな交通網の整備が検討されました。

 最初に構想が浮上したのは、1980年代後半の「北九州地域産業・港湾都市計画調査」であり、1991年11月には関門海峡道路整備促進期成同盟会が設立されました。国も第五次全国総合開発計画に「海峡横断プロジェクト」の一つとして盛り込み調査を進めましたが、2008年を持って一旦プロジェクトが凍結されました。その後地元の要望や関門トンネル・関門橋の老朽化等を踏まえて2017年から調査が再開され、2020年12月に下関市彦島 – 北九州市小倉北区()(あがり)間の最短距離を橋梁で繋ぐルート案が国土交通省の審議会で承認されました。今後、都市計画の策定や環境アセスメントなどの手続を経て事業化される予定です。開通すれば、関門橋や関門トンネルのバイパス路線として道路ネットワーク全体の信頼性向上に重要な役割を果たす道路になります。海峡部には活断層が存在することや危険物搭載車両が通行可能なことから吊橋方式の橋梁によって整備される事が決まりっています。

<結論>

・環境影響評価がはじめられたばかりであり、完成には10年以上かかるとみられる。

<ルート検討>

 下記3案を軸に検討が行われていましたが、2020年12月17日に国土交通省社会資本整備審議会道路分科会中国・九州地方合同小委員会において「総合的に優れている」として、案②の彦島 – 日明間を繋ぐルート案が承認されました。

【案①】別線案(臨海部迂回ルート)

特徴:臨海部の産業拠点の連絡性を高める案

起点部:旧彦島有料道路

終点部:北九州都市高速道路(若戸トンネル)

【案②】別線案(集落・市街地回避ルート)

特徴:両市中心部を結ぶとともに、集落や市街地を可能な限り回避した案

起点部:旧彦島有料道路

終点部:北九州都市高速道路

【案③】別線案(海峡渡河幅最小ルート)

特徴:両市中心部を結ぶとともに、海峡渡河部の距離を最小とした案

起点部:旧彦島有料道路

終点部:北九州都市高速道路

<構造>

 橋梁とトンネルで比較検討が行われていましたが、2020年7月15日の国土交通省社会資本整備審議会道路分科会中国・九州地方合同小委員会において、海峡部を吊橋とする案が承認されました。

・橋梁

地質(断層)

・活断層の不確実性等への柔軟な対応が可能。

※調査範囲が限定的で、期間が短い。(主塔等(4箇所))

気象・海象

・風、潮流の影響を受けるが、他事例で実績あり。

(風速:関門橋29.3m/s、明石海峡大橋39.3m/s)

(潮流:関門橋最大9.4ノット2)、来島海峡大橋最大10.3ノット)

航路

(施工時)

・航路内での施工(架設)範囲が狭く、規制期間も短い。

(供用後)

・航路外の主塔等であっても航行船舶等への配慮が必要。

※断層調査する場合、航路内の作業なし。

・トンネル

地質(断層)

・活断層の不確実性、止水性の確保への対応に課題。

※調査範囲が広く、期間が長い。(トンネル全線(約2~3km))

 気象・海象

・風、潮流の影響を受けない。

航路

(施工時)

・NATM、シールド: 航路内での施工が生じない。

・沈埋トンネル: 航路内での施工(掘削、沈設等)範囲が広く、規制期間が長い。

(供用後)

・航行船舶等に影響しない。※断層調査する場合、航路内作業により船舶に影響

<事業費>

 約2,900~3,500億円

(うち海峡部:約1,900~2,300億円)

<事業スキーム>

・検討中

<整備効果>

・経済活動の活性化

 九州の一大産業である自動車産業は本州への自動車部品・完成車の調達・供給を行っており、下関北九州道路の完成により、物流の安定性が向上し経済の活性化が期待されています。

・交流人口の増加、生活圏の拡大

 北九州市と下関市の交流は、通勤・通学者が約1万人/日となっていますが、30分圏域の拡大によって、更なる増加が見込まれます。

・災害時の代替機能の確保

 平成30年7月豪雨によって発生した関門橋の通行止めにより市民生活・企業活動へ大きな影響が発生しました。下関北九州道路の完成により代替ルートが確保されます。

・国道、市街地の渋滞緩和

 下関北九州道路の完成により、市街地の交通渋滞の緩和が期待されます。

<まとめ>

・下関北九州道路の完成により、下関市と北九州市の市街地における交通渋滞の緩和が期待されている。

・ルートと構造の概略が決定し事業化に向けて動き出したが、環境影響評価がはじめられたばかりであり、完成には10年以上かかるとみられる。

・事業スキームの決定と詳細ルート及び詳細構造の選定が今後の課題とみられる。

―以上―

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