今回は東京湾口道路について、土木学会、日本橋梁建設協会、建設グラフ、日本財団図書館と千葉県のHP資料及びWikipediaの情報を基に検討します。
<概略>
東京湾口道路は、構想中の地域高規格道路です。現在の国道16号における海上区間を構成する道路で、現在は計画が棚上げされており事実上の凍結状態になっています。
想定ルートは、東京湾入口の浦賀水道を吊橋または海底トンネルで横切り、神奈川県横須賀市から千葉県富津市に至る延長約17キロメートルの道路です。東京湾アクアライン、構想段階の第二東京湾岸道路や湾岸道路千葉地区専用部などとともに東京湾を8の字状に結ぶ東京湾環状道路の一部としても位置づけられています。現在、浦賀水道には神奈川県横須賀市久里浜から千葉県富津市金谷の間に東京湾フェリーが就航しています。
富津市などでは東京湾口道路の誘致活動が行われてきましたが、2008年4月、国土交通省が計画を棚上げする方針を固めたため、構想は事実上の凍結となりました。
<結論>
・交通量の大幅な増加又は、土木技術の劇的な進歩が無ければ、東京湾口道路の建設は難しい。
・橋梁は東京湾に入れる船の大きさの制限につながるためトンネル方式が推奨される。
<ルート>
1959年に産業計画会議による東京湾奥の人工島と周辺地域を結ぶ道路計画の構想、ネオトウキョウプランには。東京湾口に現在の横須賀新港ふ頭付近から、猿島付近、第二海保、第一海保付近を経由して富津岬付近に至るルートに道路と鉄道を通す計画が確認できます。
建設推進が盛り上がりを見せた2000年頃、建設グラフ1999年3月号には、横須賀市の観音崎付近から富津市の磯根崎付近へのルートが描かれている。
2021年6月に公表された千葉県広域道路交通計画には、構想路線の三浦房総連絡道路として、横須賀市の観音崎付近から富津市川名付近へのルートが描かれている。
計画が棚上げされたため、いずれも確定したルートではありません。
<構造>
財団法人海洋架橋調査会専務理事であった駒田敬一氏によって1997年にまとめられた「海外における海峡横断橋の建設動向」に記載されている図によると、下記の構造が想定されている。
ルート:観音崎から富津岬
全長:8km
主橋全長:4,360m(中央径間:2,100m、基礎設置深度:60m)
高架橋全長:3,640m(横須賀側520m、富津側3,120m)
2005年に発行された社団法人日本橋梁建設協会誌の虹橋No.69によると、下記の構造が想定されている。
海上部延長:14~17km
主橋の中央径間:2,200~2,400m、
基礎設置深度:60~70m
トンネル構造の具体案は発見できなかったが、海底最深部は80m程度とみられ、技術的には可能と考えられます。トンネル構造を採用する場合は、三浦半島断層群と近いため、詳細な地質評価が必要とみられる。
また、船舶は大型化してきた歴史があり、日本有数の港を擁する東京湾入口に橋梁を建設する事は、入港できる船の大きさの制限につながるため、トンネル方式の採用が望ましいと考えられる。
<事業性概算>
・総工費
橋梁:明石海峡大橋建設費約5,000億円程度とみられる。(車線数により変動)
トンネル:第2青函トンネル(2車線道路)の建設費約7,000億円の半分程度。
いずれの工法でも数千億円はかかり、安くとも3,000億円は下らない。
・利用台数
アクアラインとの需要の奪い合いになるため、久里浜と金谷を結ぶ東京湾フェリー利用者(年間約100万人)を大幅に上回る需要和見込めない。よって、日当たり約2,700人のフェリー利用者が全員1台の車に乗ったとしても2,700台/日程度の需要にとどまるとみられる。
・事業採算性の概算
アクアラインと同等の1台当たり1,000円程度の料金設定とすると、収入は約10億円/年。経費と利息を無視しても償還に300年かかり事業として成り立たない。
<まとめ>
・東京湾に入れる船の大きさの制限につながる橋梁方式よりも、トンネル方式の採用が望ましいと考えられる。
・現在の需要動向では、事業として成り立たない事は明らかで、建設は当分ないとみられる。
・土木技術の進歩により建設費が数百億円程度に抑えられる様になれば、建設の可能性はある。
―以上―
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