今回は、山陰新幹線について、Wikipediaと山陰縦貫・超高速鉄道整備推進市町村会議ホームページの情報を基に検討します。
<概略>
山陰新幹線は、大阪府大阪市から鳥取県鳥取市附近、島根県松江市附近を経由して山口県下関市までを結ぶ新幹線の基本計画路線です。新大阪駅を起点とし、新下関駅を終点とするルートが最も有力と考えられています。1973年に全国新幹線鉄道整備法第四条第一項の規定による「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」により告示されましたが、着工に向けた目立った動きはありませんでした。
停滞している検討を促進するため、2013年に山陰縦貫・超高速鉄道整備推進市町村会議が発足しました。6府県の市町村で構成し、鳥取市長が会長を務めます。山陰地方を縦貫し北陸地方に接続するとともに、山陰地方から京都、大阪などの京阪神を直接に結ぶ、リニア方式を含めた新幹線の整備推進を掲げています。
リニア方式で整備した場合は、東京 – 福岡間の移動ルートの一部になることも予測され、建設費13兆3537億円、便益18兆7900億円、在来型新幹線方式による整備では、建設費3兆910億円、便益3兆3789億円、経済波及効果が年間377億円と試算されたていました。今回は、京都⼤学⼤学院教授の藤井氏により2019年に示された新大阪から米子までの区間の試算結果を基に検討します。
<結論>
・新大阪から鳥取までのルート決定に相当の時間を要する。
・当面の間、建設開始に進めない。
<ルート>
様々なルートが検討されていますが、京都⼤学⼤学院教授の藤井氏により2019年までに示されているルートは以下の通りです。
新大阪駅:地下2面4線(北陸新幹線と共用)
松井山手駅:地下又は地上2面2線(北陸新幹線と共用)
京都駅:地下2面2線(北陸新幹線と共用)
東小浜駅:地上2面2線(北陸新幹線と共用)通過線又はホーム増設か?
西舞鶴駅:詳細構造及び位置未定
岩滝口駅:詳細構造及び位置未定
豊岡駅:詳細構造及び位置未定
湯村温泉駅:詳細構造及び位置未定
鳥取駅:詳細構造及び位置未定
倉吉駅:詳細構造及び位置未定
米子駅:詳細構造及び位置未定
米子から出雲までは伯備新幹線として整備するとみられる。
出雲から新下関までは未定。
新下関駅(既設):地上2面3線(山陽新幹線と共用か?)
<時間短縮効果>
・時間短縮効果(最高速度320km/h)
新大阪駅~米子駅間:3時間12分→1時間59分
新大阪駅~鳥取駅間:2時間33分→1時間22分
新大阪駅~西舞鶴駅間:1時間48分→59分
<事業性検討>
・前提条件
北海道新幹線札幌まで:2031年開通
リニア中央新幹線名古屋まで:2027年開通
大阪まで:2037年開通
北陸新幹線敦賀まで:2023年開通
大阪まで:2046年開通
九州新幹線長崎まで:2023年開通
※これらの新幹線の建設費用は、GDP・GRP推移には含まない。
※ 本試算では、伯備新幹線の整備は前提としない。
・単線ベース
新大阪-鳥取間 建設費:0.69兆円 累積GDP増加(10年):1.43兆円
新大阪-米子間 建設費:1.18兆円 累積GDP増加(10年):2.39兆円
・全線フル規格複線
新大阪-鳥取間 建設費:0.90兆円 累積GDP増加(10年):1.72兆円
新大阪-米子間 建設費:1.60兆円 累積GDP増加(10年):2.96兆円
<今後の課題>
・整備方式と整備ルートを具体的に決定する必要がある。
・ルート決定後に詳細な効果試算を実施し、費用対効果があることを証明する必要がある。
<まとめ>
・様々な試算がなされているが、具体的な整備方式とルートは決まっておらず、詳細検討が進んでいない。
・大まかな試算では、建設による効果は得られると考えられる。
・新大阪から鳥取までの間は、山岳地形で人口集中箇所が分散しており、ルートの一本化には相当の時間を要すると考えられる。
・山陰縦貫・超高速鉄道整備推進市町村会議には小さな市町村も含まれているため、駅間距離の長いリニアによる整備で沿線地域の意見をまとめることは難しいとみられる。
-以上-
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