今回は、京王線の複々線化について、関係自治体のHP資料、環境省のHP資料及びWikipediaの情報を基に検討します。
<概略>
京王線は、路線名称としては新宿駅から京王八王子駅までを結ぶ鉄道路線を指し、線増区間である京王新線を含みます。運転系統としては京王新線が除かれます。一方、京王線系統としての京王線は京王電鉄の鉄道路線のうち、京王線(および京王新線)・相模原線・競馬場線・動物園線・高尾線の総体を指します。
ここで取り上げる京王線の複々線化は、京王線の混雑の緩和、東京都西部と都心部とのアクセス利便性の向上、橋本駅へのアクセス利便性の向上を目的とし、笹塚駅から調布駅間に急行線を新設する構想ですが、事業化の目途は立っていません。新宿駅から笹塚駅間の3.6kmには京王新線があり、都営地下鉄新宿線と相互直通運転を行うと共に、複々線として機能しています。
一方、京王線の笹塚駅から仙川駅間の約7.2kmの区間については、道路と鉄道の連続立体交差化事業が事業中であり、25箇所の踏切を除却し、あわせて側道を整備する計画です。事業期間は2013年度から2022年度となっていますが、期間は延長される見通しとなっています。
<結論>
・複々線化の都市計画決定区間は笹塚駅からつつじヶ丘駅間のみ。
・京王線の複々線化事業は凍結される可能性が高い。
<計画概要>
区間:笹塚駅~調布駅間
延長:11.9km
通過地域:東京都 調布市、世田谷区、杉並区、渋谷区
都市計画決定権者 :東京都知事
都市計画決定区間:笹塚駅西側~つつじヶ丘駅東側(約8.3km)
線路構造:トンネル、掘割、高架橋、盛土
設計最高速度:120km/h
都市計画未決定区間:つつじヶ丘駅東側~調布駅東側
複々線化区間(笹塚駅~調布駅間)のうち、地上部は、笹塚駅~代田橋駅間及びつつじヶ丘駅付近のみ。
<想定運行パターン>
特急、準特急、急行が地下線を通ると想定した場合の、複々線化区間の地下線の停車駅を想定した結果は、下記のようになった。地下区間は駅設置無く、多くの駅が通過駅となるため、複々線化が実現した後に列車種別は再編されるとみられる。
・現行
特急停車駅:調布、明大前、新宿
準特急停車駅:調布、千歳烏山、明大前、笹塚、新宿
急行停車駅:調布、つつじヶ丘、千歳烏山、桜上水、明大前、笹塚、新宿
・複々線化後
特急停車駅:調布、新宿
準特急停車駅:調布、笹塚、新宿
急行停車駅:調布、つつじヶ丘、笹塚、新宿
<事業採算性>
2016年に行われた交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会の東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会における検討結果資料によると、以下の様に見積もられています。
総事業費:1,695億円
輸送密度:547.4~507.5千人/日
ピーク時最大断面輸送量:90.1~87.4千人/h
社会経済的効果:混雑緩和、速達性向上、都市機能の高度化
B/C費用便益比:2.0~1.8
<事業主体>
京王電鉄株式会社の単独事業となるとみられる
<事業中の京王線立体交差化>
事業区間:笹塚駅~仙川駅間
構造形式 :高架式(嵩上式)、掘割式
延長:約7.2km
駅施設:代田橋駅、明大前駅、下高井戸駅、桜上水駅、上北沢駅、八幡山駅、芦花公園駅、千歳烏山駅
ホーム延長:各210m
ホーム幅員:約2~10m
都市高速鉄道付属街路(東鉄10付3号線~東鉄10付17号線)
幅員:6m~19m 路線数:15本
付替道路等
幅員:4m~11m 路線数:10本
<まとめ>
・京王線の複々線化は、笹塚駅からつつじヶ丘駅間のみ都市計画決定されている。
・複々線化よりも立体交差化事業を優先させており、事業主体の京王電鉄は複々線化を喫緊の課題とはとらえていない。
・コロナ後に鉄道需要は減ることが見込まれており、将来的に利用者が増える要因としては橋本駅のリニア開業が考えられるが、橋本駅を通過するリニア列車が多いと考えられ、当面利用者が増加する要因は無いものとみられる。
以上のことから、京王線の複々線化事業は凍結される可能性が高い。
-以上-
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