秋田新幹線【機能強化策と延伸構想】

 今回は、秋田新幹線の機能強化策と延伸構想についてJR東日本と関係自治体のホームページ資料、土木学会東北支部技術研究発表会資料及びWikipediaの情報を基に検討します。

<概略>

 秋田新幹線は東京から秋田間を結んでいます。盛岡から秋田間の田沢湖線と奥羽本線を新幹線車両が直通できるように改良し、1997年に全国新幹線鉄道整備法に基づかない新在直通方式のミニ新幹線として開業しました。同法では「主たる区間を200km/h以上の高速度で走行できる幹線鉄道」を新幹線と定義しており、法律上は盛岡駅から秋田駅間は在来線であって新幹線ではありません。

東京駅から盛岡駅間の東北新幹線は最高速度320km/hで運行されていますが、盛岡駅から大曲駅そして秋田駅までの間は在来線であるため最高速度は130km/hです。また、配線の都合により大曲駅でスイッチバックを行っています。2014年には全ての車両が新在直通用車両のE6系に置き換えられ、「こまち」として1日16往復運行されています。

<結論>

・新仙山トンネル整備による機能強化が実現に向けて動き出したが、完成には10年以上かかる。

・延伸計画は無いが、奥羽新幹線との重複区間が先行整備されれば秋田新幹線の機能は強化される。

<主な課題>

・速度制限箇所が多い

 盛岡駅から秋田駅の区間は最高速度130km/hですが、実際に130km/hで走行できる区間は全体の約23%に過ぎません。特に県境にある(あか)(ぶち)駅から田沢湖駅までの区間は、急曲線が多く速度制限箇所が多い区間となっています。

・単線行違いによる所要時間の増加

盛岡駅から秋田駅間の約127kmのうち、複線区間は神宮寺(じんぐうじ)駅から(みね)吉川(よしかわ)駅間の約12km となっており、複線化率は約10%です。他区間はすべ 単線行違いとなっており、秋田新幹線の停車駅以外で運転停車や不要な待ち時間が発生しています。

・自然災害の影響を受けやすく、影響が東北新幹線に波及

盛岡から秋田間の田沢湖線と奥羽本線区間では雪・雨・強風等の自然災害が発生しており、秋田新幹線内の遅延が東北新幹線に波及しています。

・橋りょう等の設備の老朽化

  40年以上経過した橋りょうの多くが、赤渕駅から田沢湖駅間に集中していますが、急曲線が連続するため、橋りょう架け替えのための配線変更が困難であると共に、急峻な地形での架け替えには仮設道路や仮桟橋(さんばし)等が必要となります。工事期間中、秋田新幹線の長期運休や莫大な工事費と工期が必要となる見込みです。

<検討されている対策>

・新仙岩トンネル整備

 秋田新幹線の赤渕駅から田沢湖駅の間に新たにトンネルを整備する構想で、自然災害等による輸送障害リスクの低減、新幹線ネットワークの定時性・安定性の向上、秋田新幹線の高速化及び時間短縮などを目的としています。また老朽化した橋りょう等の架け替え工事を不要とする事も大きな効果の一つです。

・事業区間:秋田新幹線 赤渕駅(岩手県)~田沢湖駅(秋田県)間の約15kmの区間

・工   期:着工より約11年を想定

・事 業 費:約700億円

・主な整備効果(2020年3月 秋田県交通政策課による委託調査)

  建設投資による経済波及効果:約1,113億円

  時間短縮による利用者便益:年間約11億円(約7分間短縮:最速約3時間30分)

  社会的損失回避・低減:運休・遅延による損失回避、安定運行による鉄道の信頼性向上

・現状

 2021年7月26日にJR東日本と秋田県は、整備計画の推進に関する覚書を締結し、取組の推進に当たって、 緊密な連携のもと、情報の交換等に努める事で合意した。

・今後の取り組み

  事業スキーム確定に向けた検討

  事業化に資する調査及び検討

  財政的支援を得るための国への働きかけ等

 ・ルートと構造

 平成21年度の土木学会東北支部技術研究発表会資料によると、トンネルのルートは、トンネル延長や河川、土圧等を条件とし、3 案について比較検討を行った。その結果、トンネル延長は 最長となるが、沢を避けることで河川の切り回しが不要となり、安定した土圧のルートとなる最も南寄りの案が最有力とされている。また、トンネルのほぼ中間地点に行違い設備の設置を想定している。

<延伸構想等>

・能代延伸56.7km

 田沢湖線と奥羽本線を改軌・改築した結果、盛岡駅から秋田駅を経由しての青森方面への直通が不可能となり、盛岡方面からの直通列車が無くなった。このため能代市では、秋田新幹線の東能代駅までの延伸を要望していたが、現在は延伸に向けた活動は行われていない。

・奥羽新幹線重複区間の先行整備

 秋田県では、羽越及び奥羽新幹線の実現に向けた活動に力を入れている。秋田新幹線と重複する奥羽新幹線区間(大曲 – 秋田間42.7km)を先行整備すると、秋田新幹線の機能強化につながる。しかし、奥羽新幹線に着手する目途が立っていないことから、現状では実現の目途は無い。

<まとめ>

・新仙山トンネル整備による機能強化が実現に向けて動き出したが、完成には10年以上かかる見込みであり予算確保の目途も立っていない。

・現在延伸計画等は無いが、奥羽新幹線との重複区間の先行着手が実現すれば、秋田新幹線の機能強化につながる。

―以上―

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