リニア静岡問題(ルート変更は可能か?)

 今回は、先日静岡県知事から言及のあったリニア中央新幹線のルート変更について、リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議の資料を基に検討します。

<リニア中央新幹線の概要>

 リニア中央新幹線は、最高設計速度時速505 kmの高速走行が可能な超電導磁気浮上式リニアモーターカーにより建設されています。2011年5月26日に整備計画が決定され、営業主体および建設主体にJR東海が指名されました。同年5月27日には、国土交通省からJR東海に建設が指示されました。首都圏から中京圏の2027年の先行開業を目指しており、2014年12月17日に同区間の起工式が行われ、完成後は東京都の品川駅から愛知県の名古屋駅の間を最速で40分で結ぶ予定です。ただし、JR東海は大井川の流量減少への懸念を理由とした静岡県のトンネル着工反対により、2027年開業は困難との見解を2020年7月時点で示しています。2021年6月には、静岡県知事がルート変更要請を示唆する発言を行ったことから、今回その可能性について検討しました。

<結論>

・ルート変更の可能性は極めて低い。

<静岡県内のルート>

・源流に近い大井川の下をトンネルで抜けるルートが計画されている。

・リニアルートは静岡県内全区間をトンネルで通過。

・非常口が2か所建設される予定。

<これまでの経緯>

2011年5月12日:交通政策審議会からの答申

2011年5月20日:営業主体、建設主体の指名(国土交通大臣)

2011年5月26日:整備計画の決定(国土交通大臣)

2011年5月27日:建設の指示(国土交通大臣→JR東海)

2011年6月~2014年8月:環境影響評価

2014年3月:静岡県知事意見

・工事中のみならず、供用後についても大井川の流量を減少させないための環境保全措置を講ずること。

・工事中はもとより、供用後も見通した環境保全措置を講じ、南アルプスの自然環境への理解及び 保全への最大限の配慮を求める。

2014年10月17日:工事実施計画の認可(国土交通大臣→JR東海)

2014年12月17日:着工(JR東海)

2018年10月:JR東海が「トンネル湧水の全量を大井川に戻す」ことを表明

2020年4月:国土交通省が静岡県とJR東海との対話が促進されるよう有識者会議を設置

2021年6月:静岡県知事がルート変更要請を示唆

<静岡工区が着工できない理由>

・法的根拠

 大井川上流の河川管理者である静岡県が、土地の掘削等の許可を出さない見込み。

・静岡県の主張

 トンネル湧水による大井川の水資源への影響が懸念される。

 トンネル湧水による南アルプス生物多様性への影響が懸念される。

 大量発生する残土による生態系、環境への影響が懸念される。

<有識者会議の状況>

・大井川の水量⇒影響は軽微

・トンネル湧き水の生物多様性への影響⇒今後議論

(軽減が目的で完全に取り除く必要はない)

・残土による生態系、環境への影響⇒今後議論

(最悪は別の場所で処分)

以上の事から河川法による許可を妨げる理由は、有識者会議により取り除かれつつあり、法的にリニア工事を止める手段は無くなりつつある。

<静岡県によるルート変更要請>

 有識者会議の状況を踏まえると、ルート変更を要請する根拠が現状見当たらない。

<静岡県のとりうる対応>

・何が目的で反対しているのか国民に分かりやすいフレーズで訴える。

・国やJR東海の失言や失点を細かく突き、ルート変更やむ無しの民意の醸成。

<JR東海のとりうる対応>

・静岡県の意図的な会議の引き延ばしを記録し、静岡県によって着工が遅れた期間に受けた損害賠償請求を準備。

・静岡県の突発的な批判に対し、冷静に対処できる対応チームの準備。

<国のとりうる対応>

・有識者会議を規定通りに運営し、国の出したい結論通りに終わらせる。

・静岡県が根拠無く許可を出さない場合は、法的措置を実施する。

<まとめ>

・ルートは国の許可したものであり、JR東海ではなく国の専権事項。

・ルート変更を提起できるほどの理由は見当たらない。

・開業日程は遅れるが、現ルートでのリニア建設そのものに障害はほぼ無い。

-以上-

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です