新空港線(蒲蒲線)

 今回は、大田区などが調査・計画中の鉄道路線である新空港線、通称蒲蒲線について、大田区の事業計画とWikipediaの情報を基に検討します。

 この路線は、東急電鉄の蒲田駅とそこから約800m離れた場所にある京浜急行電鉄(京急)の京急蒲田駅を連絡し大田区東西方向の移動の利便性を向上するとともに、羽田空港へのアクセスを改善する空港連絡鉄道として検討が進められています。全体計画としては、東急多摩川線矢口渡駅付近から多摩川線を地下化し、東急蒲田地下駅、京急蒲田地下駅を通り、大鳥居駅の手前で京急空港線に乗り入れる計画です。

<結論>

・蒲田駅から京急蒲田駅までの一期工事区間は事業性も高く、着工へのハードルは低い。

・京急蒲田駅から羽田空港駅への乗入れは、軌間が異なる路線間の接続方法等の課題があり、着工は難しい。

<当初ルート>

 本路線は、複数の案が過去に検討されていますが、代表的なものとして大田区案を取り上げます。

・大田区当初案

 2002年度から2004年度まで大田区が行った整備調査により、下記の案が示された。

区間:矢口渡駅 – 東急蒲田駅地下 – 京急蒲田駅付近(新蒲田駅、南蒲田駅)- 大鳥居駅

距離:2.7km

建設条件:全線単線

狭軌:矢口渡駅 – 東急蒲田駅地下

標準軌:東急蒲田駅地下 – 大鳥居駅

(東急蒲田駅地下で乗り換えが必要)

課題:

東急多摩川線全列車が地下に新設される蒲田駅に乗り入れできず、蒲田駅の移動が複雑。

用地買収に時間を要し、早期整備が難しい。

未決定の部分を補完している。

<現行ルート>

2015年1月19日に行われた新空港線「蒲蒲線」整備促進区民協議会で大田区は以下のような案を示しています。

〇第一期

区間:矢口渡駅 – 京急蒲田地下駅

路線規格:狭軌複線

乗入れ条件:東急多摩川線の全列車乗り入れ

〇第二期

区間:京急蒲田地下駅 – 大鳥居駅

路線規格:標準軌単線

乗入れ条件:大鳥居駅手前で京急空港線に乗り入れ

※途中軌道変換装置を設け、開発中の軌間可変電車(フリーゲージトレイン)によって東京メトロ副都心線・東横線・目黒線方面からの直通列車を東急多摩川線経由で羽田空港まで運転。

<整備計画概要>

事業範囲:矢口渡 – 京急蒲田

整備主体:第三セクター

運行主体:東急電鉄

事業費:1,260億円(現在想定され得る工事とリスクを加味した金額)

費用便益比:1.5(基準値の1.0を大きく上回り、社会経済的に有意義な事業と評価。)

累積資金収支黒字転換年数:31年(整備主体が公的第三セクターの場合に国の示している基準は40年以内であり、その基準以内。)

<まとめ>

 計画に対して、2016年4月の国の交通政策審議会答申では、以下の方針が示されている。

・矢口渡から京急蒲田の事業計画の検討は進んでおり、事業化に向けて関係地方公共団体・鉄道事業者等において、費用負担のあり方等について合意形成を進めるべき。

・大鳥居までの整備については、軌間が異なる路線間の接続方法等の課題があり、さらなる検討が行われることを期待。

<主な課題>

・JR東日本が計画している羽田空港アクセス線との整合性。

・東急側の車庫の収容能力不足。

・東急蒲田駅地下化による乗り換え利便性が悪化。

<まとめ>

・大田区は、第一期工事着工に向けて整備主体となる第三セクターの立ち上げを目指している。

・本計画の現状は、2016年4月の交通政策審議会答申で示された方針の通りである。

⇒矢口渡から京急蒲田の事業計画の検討は進んでおり、事業化に向けて関係地方公共団体・鉄道事業者等において、費用負担のあり方等について合意形成を進めるべき。

⇒大鳥居までの整備については、軌間が異なる路線間の接続方法等の課題があり、さらなる検討が行われることを期待。

-以上-

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