今回は、東九州新幹線調査時に見つけた、大分市作成の豊予海峡ルート調査業務概要版から、道路部分の調査結果について検討します。鉄道部分につきましては次回の検討にしたいと考えています。豊予海峡ルートは、愛媛県と大分県を結ぶルートで愛媛県伊方町の佐多岬と大分県大分市の関崎との間にある豊予海峡をトンネル又は橋梁で結ぼうとする構想で、1998年に策定された全国総合開発計画の構想にも盛り込まれています。構想自体は昔からあるものですが、具体的な数値見積もりが出てきたのはこの資料が初めてではないかと思います。
<結論>
海底トンネル部分のコスト信頼性が低く、今後詳細調査が望まれる。
<調査の位置づけ>
・目的:豊予海峡ルートの実現に向けた方策を探るために実施。
・調査主体:大分市企画部企画課
・期間:2016~2019年度
<ルート>
大分県の大分宮河内ICから豊予海峡を経て愛媛県の保内ICに至るルートで計画。
橋梁の場合:大分県陸上部分(17.9km)海峡橋梁(14.9km)愛媛県陸上部分(44.6km)
トンネルの場合:大分県陸上部分(14.2km)海峡トンネル(21.2km)愛媛県陸上部分(40.9km)
<事業費>
| 2車線 | 4車線
橋梁 | 1兆2,830億円|1兆8,150億円
トンネル| 6,900億円|1兆 590億円
<構造>
橋梁:14.9km
・浅瀬・小島を通過するようにし、直線で結ぶようルート選定。
・船舶通行の必要高および桁下高(39m以上)を確保するようルート選定。
トンネル:全長20.7km、海底部分13.3km
・水深が深い箇所を避け、延長が短くなるようルート選定。
・土被りを30m以上確保、勾配=2.5%以下となるようルート選定。
・水深最大180m、最深部垂直土被り37m。
<見積参考>
・海峡部(トンネル):首都高中央環状線の新宿線の工事費単価を参考
・海峡部 (橋梁) :日本の長大橋(明石海峡大橋等)の工事費単価を参考に推計
・陸上部:南九州西周り自動車道(4車)や九州中央自動車道(2車)の工事費単価を参考
<費用便益B/C>
総便益(社会的割引後):4,255億円
総費用(社会的割引後):3,361億円
B/C:1.27(社会的割引率4%)
<本調査の問題点>
・海底トンネル特有の排水設備などの費用が見積もられていないとみられる。
・4車線と2車線をパターン分けして効果を見積もっていないとみられる。
<まとめ>
事業性の判断をするには、より詳細な調査を続けていく必要がある。
―以上―
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