東九州新幹線調査報告書

 今回は東九州新幹線について東九州新幹線調査報告書に基づいて調査しました。東九州新幹線を考える上で、現状この資料が唯一の一次資料となりますので、この資料を調査した結果をご報告します。

<結論>

 着工へのハードルは高いが、詳細検討で地元が必要性を示せれば、着工する可能性はある。

<報告書の位置づけ>

 発注者:東九州新幹線建設促進期成同盟会

 実施機関:株式会社 野村総合研究所

 発行時期:2016年3月

<前提条件>

 駅の位置:設定した各ゾーンに1つと想定。(ゾーン詳細は後述)

 評定速度:210km/h

 需要予測パターン:「すう勢ケース」と「戦略ケース」の2パターン

  すう勢ケース:社会経済状況から予測できる範囲を予測

  戦略ケース:社会経済状況からの予測に政策を加味したもの

 ルート条件:小倉駅から鹿児島中央駅までとし、小倉から山陽新幹線に乗り入れて福岡に至るものとする。

<ルート・ゾーニング>

東九州新幹線のルートは、下記に示す九州東部の8ゾーンを通過する。

数字は現在の所要時間と新幹線開通後の各区間の所要時間を示す。

「北九州・筑豊」

   |現状:32分 → 開通後:14分

「周防灘」

   |現状:51分 → 開通後:19分

「大分・日田・玖珠」

   |現状:50分 → 開通後:12分

「佐伯」

   |現状:66分 → 開通後:13分

「延岡」

   |現状:65分 → 開通後:23分

「宮崎・日南」

   |現状:48分 → 開通後:11分

「都城・小林」

   |現状:81分 → 開通後:18分

「鹿児島・大隅」

東九州新幹線以外の九州は下記6ゾーンに分割し、需要予測や経済効果を算出。

「福岡」、「久留米・大牟田」、「佐賀」、「長崎」、「熊本」、「川北(せんほく)(さつ)串木野(くしきの)

<試算結果>

 新規整備区間:380km

 整備費用:26,730億円

 費用対効果(B/C) (下表のとおり30年と50年の期間でそれぞれ試算)

 ※B/C 1.0を50年の期間でかろうじて超える。

 整備時の経済効果:6.21兆円

<課題>

 ・地域のローカル交通との整合性が未検討。

 ・駅、ルートが未確定なため、将来像を明確に描けていない。

 ・詳細な検討がされていないため、現状の予測は概算でしかない。

<まとめ>

 費用対効果が低く、検討結果も概算であるためこの結果をもって着工に進むことはできない。着工へ向けてはより詳細な検討と地元の機運醸成が必須となる。

 高速交通網を整備することは、地方の発展には必須です。地方の負担が増えるからいらない等の単純な議論ではなく、高速交通を地域としてどう整備していくべきか、今後建設的な議論が進められることを望みます。

―以上―

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